私だけのアイドルだったのにな選手権

私だけのアイドルだったのにな…※アイドルマスターSideMの二次創作企画です。公式様とは一切関係ございません。

#私だけのアイドルだったのにな選手権 結果発表!!

皆さん、お疲れさまです! つのです。

昨年11月から始まった「#私だけのアイドルだったのにな選手権」、いよいよ結果発表です。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました…!

昨年11月!? そんなに経ってたのか…。

本選の総投票数は55票!!思っていたよりもたくさんの方々に投票していただき、本当にありがたかったです。エピソードを読んだ方々の反応を見るのも楽しかった……!!

 

それではいよいよ結果発表です。皆様の投票により決定した「顕」が強いエピソードランキングTOP5、そして主催・つのの完全な好みにより選ばれた「つのの好み賞」を発表します。

※各アイドルそれぞれでランキングを定めてはどうか、というアイディアもいただきましたが、今回はトラブルを避けるため見送らせていただきます。ご提案いただきありがとうございました。

まずはランキングTOP5から!

エピソードTOP5

第5位(3票)

ペンネーム:甲殻類アレルギーさん

アイドル:舞田類

大学2年の頃、まあまあ病んでた時期があって、寝れなかったり物忘れが激しかったりでまともに授業出れてなかったんですけど。深夜に大学垢で「どっか遠く行きたい」って呟いたら、類からDMが来たんですよ。同じ国際交流サークルだけど、サシじゃほぼ話したことなかったのに、ですよ。あとアイツ馬鹿みたいな数の兼サーしてましたし。しかもそれが、 「Hey, Sota(偽名です)! 海行かない?」 の、たった一行。深夜2時半過ぎに。正直、コイツ確信犯だろって思いましたね。即レスで「行く」って返してましたよ。 で、なんかとんとん拍子に日程とか決まって、2人で駅から海までの30分くらい歩いて。夏前の、ほぼ人がいないビーチに行ったんです。割と梅雨近かったのに、笑うくらい晴れてましたね。ズボンまくって膝まで海に入ったり、水蹴ったりして。いやなんだよこれ青春じゃん、ってなってましたね。めっちゃ冷たかったな。 で、寒くなってきたから上がったら、類にドクペ差し出されたんですよ。ドクターペッパー。俺割と好きなんで、礼言って貰おうとしたらひょいって避けられて。意味わからんくて固まってたら、今度はメントスをちゃんと渡されたんすよ。で、開けた缶指差してニヤって笑うもんだから。もう、なんなんだよお前って思いながら3粒一気にぶっ込みました。噴き出したドクペの勢いが阿呆みたく強いもんだから、類びっくりして放り投げちゃって。2人でめっちゃ逃げ回って爆笑してましたよ。 結局大学には5年間いたけど、あんなに輝いてる瞬間なかったっすね。アイドル向いてますよ、アイツ。

 

 ドクペメントスやる類、分かりすぎる。類のちょうどいい塩梅の優しさって、本当に良いですよね……。類にこうやってハッピーに救われた人達って、本当にたくさんいるんだろうな。

 

第4位(4票)

ペンネーム:シーラさん

アイドル:古論クリス

10年前に絶対古論クリスだって人に出会って一目惚れした私の話なんですけど聞いてくれますか?? あの、静岡に有名な深海水族館があるんですけどそこに家族と行ったんですよ。 昔から魚とか海とか好きだった当時10歳の私、シーラカンスの冷凍保存をみて大興奮。ほんと、強そうで、歯が鋭くて、生きた化石ってだけでもカッコイイのに見た目までカッコイイとかマジやばいでしょ? でも6歳の弟はシーラカンス見るなりビビっちゃって。 たしかに当時の私たちとサイズが変わらないし、なんなら弟よりシーラカンスの方が大きいんじゃ?って感じだったからビビるのもわかるんですけど、ずっと「怖い」「早く帰ろうよ」って泣きついてくるからウザくて。 弟のワガママにどうしたものかと悩んでいたらお兄さんが声をかけてくれたんですよ。 「大丈夫です、この魚はとても優しい魚なんですよ」 背が高くて、おとぎ話の中から出てきたような顔立ちのお兄さん。 「普段は洞窟で暮らすような臆病な子ですから人を襲うことはありません。」 弟に目線を合わすようにしゃがんで話してくれました。 お兄さんの話を聞いてから弟も怖くなくなったのか、冷凍保存のシーラカンスをまじまじと見つめていました。私はお兄さんから目が離せなかったんですけどね。 美人なお兄さんで、魚のこと詳しいから飼育員さんかな?って思ってたら全然、普通のお客さんだったのマジびっくりした。 その水族館って、日によるんですけど館長自ら展示されてる深海魚について語ってくれるイベントがあって、そのお兄さん、客席で私らと一緒に話聞いてて。そこで「この人飼育員さんじゃないんだ」って気づいたんですよね。普通に質問コーナーとかで手上げて質問してたし。まるで子供みたいに無邪気なお兄さんだったんですけど、ほんとにイケメンで優しいし声も好きだし魚のこと詳しいから気になって気になって笑。 イベント終了後にお兄さんのことが気になるから後を追ってたら、館長さんとお兄さんがお話してて。 「今日も来てくれたんですねクリスさん!」って館長さんが言ってたから「あの人の名前はクリスさんって言うんだ」って覚えました。好きな人の名前って一生忘れないでしょ?未だに覚えてるもん。 その後お兄さんに声をかけたかったんだけど、弟に声かけられて目を離した隙に見失っちゃって。仕方なく館長さんに聞きに行ったんです。「さっきのお兄さんって何者なんですか」って笑。 「あークリスさんね!まだ学生なのに僕達プロ顔負けの知識量でいつも驚かされてるよ。」 どうやらこの辺では有名な人みたいで、月に何回も水族館にくる常連さんらしい。海洋学者?を目指してるんだとかなんだかんだと館長さんが話してくれましたが当時の私にはちんぷんかんぷん。 とにかく、クリスさんというお兄さんにもう一度会いたい。ただそれだけでした。かっこよくて魚のことも海のことも詳しくて、優しくて…。 クラスの男子がイモムシにみえるくらいにはイケメンだったと自信もっていえます。(クラスの男子ごめん) お兄さんともっとお話がしたい! その一心でその後も何回か家族でその水族館を訪れては、クリスさんが来ていないか確認するというストーカー染みたことをしていました笑 当時の私必死じゃん笑 でも残念ながら会えなかったんですよねぇ。 クリスさんって名前も、あの顔も、全部覚えていたから見間違いや人違いもしてない。何時間も水族館にいて魚じゃなくてお客さんの顔を見て回るという今やったら通報される様なことしてましたね。 結局、何度行ってもクリスさんに出会えず、初めてあったあの日以来会えずに月日が経つばかりでした。 あまりにも会えないから「あのお兄さんって実は人魚かなにかだったのか?」と思ってました。 10年経って、音楽番組に映る彼を見るまでは。 まさかと思った。初恋の人のような憧れの人の顔を忘れるわけが無い。しかし10年も経ってるし、他人の空似なんてことも有りえ…… 「Legendersの古論クリスです」 クリスだって!!!!!!!!!!!!間違いないじゃん!!!!!え!!??!彼アイドルだったの!!!?!???そりゃ顔がいいわけだ!!!! 急いで弟にもテレビをみせて確認しましたが弟は流石にお兄さんのこと覚えてなかった。ちくしょう。 普段あまり音楽番組なんてみないのにその日は画面に食いついて見てしまった。 クリスさん、番組内でもちょこちょこ海の話や魚の話してるし、この優しい声と話し方は絶対間違いなくあの時のお兄さんだって、確信しました。 それから色々調べて知りましたが、元々は大学で海洋学を教える教授だったんですね。一足遅かった。 というのも、私、今大学で海洋学を学んでるんです。 海のこともっと知りたくて、学科専用の船に乗って関東近海を調査ができる大学に入学したんです。10年前のクリスさんが「海洋学者を目指している」と知った時から気になってたので、大学は絶対に船に乗って海に出て直接自分の目で見れる学校に入ろうって決めてたんです。クリスさんの授業受けたかったよ〜!!うちの学校でも講師してくれ〜!!笑 水族館で出会ったときのお兄さんも素敵だったけど、 テレビで歌って踊るクリスさんはもっと素敵でした。 クジラの様な歌声、ビブラート、シビれる。 もう二度と出会えないんじゃないかと思ってたお兄さんとこんな形で出会えるなんて夢みたいですね。 クリスさんのおかげで夢を見つけたので、お礼も兼ねてファンレターを書こうと思います。あの水族館のシーラカンスの写真と、10年前の思い出も一緒に。

 

クリスさんの歌声を「クジラのような歌声」と表現できるところ、間違いなく古論クリスのオタクだし彼の素敵な感性が繋がっているのが、本当に良い……。

 

第4位(4票)

ペンネーム:む さん

アイドル:ピエール

多分あれはピエールくんだったんだと思います。多分ですけど。何年か前に仕事を辞めて、いろいろあって病院に通ってました。バスを降りて少し病院まで歩くのですが、何故か何度も行ったことがあるはずなのに病院までの道がわからなくなっていました。その頃、精神的に追い詰められていたので、それが理由だったんじゃないかと思います。道端の案内図を目の前にして、ぼーっと立っていました。地図を見ても碌に頭に入って来なくて、このまま何も出来なくなるんだろうなと思っていたその時、声をかけてきたのがピエールくんでした。「まいご?」「大丈夫?」「道 わかる?」と片言の日本語なのに必死に私を心配してくれているようでした。××病院に行きたいと伝えると、「病院!わかる!」と言ったあと私を少し眺めて、「痛い?」「へいき?」と尋ねてきました。私も年齢だけは大人なので大丈夫だよと伝えたのですが、ピエールくんは何を思ったのか、おもむろに私の手を引いてとてもゆっくり歩き始めました。結構な頻度で私を振り返りながら、片言ながらもかえるのぬいぐるみのことや、お友達のことを話してくれました。病院に着いても尚、心配そうに私を見て手を握ったままでした。なんだかその様子がおかしくて、私は笑って「送ってくれてありがとう」と言いました。するとピエールはほっとした様子で「おねえさん!スマイル!」「きらきら!」と言って嬉しそうに笑いました。それからピエールくんとは手を振って別れました。その日以来、その子と会っていません。私も通院する必要が無くなり、また新しく働き始めています。もう会えることは無いかもしれませんが、あの日ピエールくんと歩いた時間は、私の人生で必要な時間だったんだと感謝しています。ありがとう。

 

たった数分に過ぎないけれど、確かに自分にとって必要だったと思える時間ってありますよね。そんな一瞬に315プロのアイドルが優しくかかわっているのが素敵すぎる。きっといつまでもピエールの笑顔が投稿者さんの心をあたたかくしてくれるんだろうなぁ。

 

第4位(4票)

ペンネーム:たいやき屋さん さん

アイドル:牙崎漣

昔ちょっとだけたい焼き屋やってました。 じいちゃんの店なんだけど、脚やっちゃって入院してて、その代打で数ヶ月くらい。 じいちゃんからちょろっと教わった程度なのに今日から1人で店やれなんて無茶ぶりにも程がある。一応焼けますよ〜…ってレベルなのに。ただ不幸中の幸いか、ぜんっぜんお客さん来ないのよ。まあ寂れた公園の端っこにあったからさ。デカデカした赤い屋台なんて普通ビビって近づかないわな。 そんな感じでめちゃくちゃ暇だったので、いつしか公園に来る人を観察するのが楽しみになってた。 土木のお兄さん。いつも12時過ぎに公園に来て、ベンチに座って昼飯食ってた。でっかい弁当をものの5分で空にしてて、見ていて気持ちいい。たまにたい焼きをデザート代わりに買ってくれた。 たまに散歩に来るじいちゃんとばあちゃん2人組。来た時はいつも2匹買ってってくれた。家でお茶いれて一緒に食うんだって。ああいう風に歳とりてーよなあっていつも思ってた。 あともう1人。いつの間に来ていつの間にか居なくなってる、そんな子。 銀髪だから結構目立つ。顔も日本人離れしてて、綺麗だったんだ。 いつも空手…?拳法かなんかの型を練習してた。あとはベンチで寝てるか、猫と遊んでるか。学校とかは行ってなかったぽい。 結構肌寒くなってきたある日、あのこはベンチに座って猫抱えたまま動かなかった。何があったのかはわかんないけど、服がちょっと汚れてた。心配になって話しかけたけど、ちらっとこっちを見ただけで返事はなかった。 お腹すいてんのかもなあって思って、焼きたてのたい焼きを紙に包んで渡した。「熱いから気をつけてね」って言ったら、俺をじーっと見てんの。やっぱり綺麗な子だなと思った。 そういえば海外って、無理やり食べ物を渡して後から請求するって手口があるらしいな。ふと思い出したのでついでに、「タダでどうぞ」と付け足して言った。 俺からたい焼きを受け取ると、あのこはぺろっと一匹平らげた。そんで紙を丸めて、完璧なコントロールでゴミ箱に投げ入れたあと、俺にこう言ったんだ。 「なかなかウマかったぜ!この食いモンの名前を教えやがれ!」 それからすぐ、じいちゃんは復活して俺はたい焼き屋をやめた。あのこがどうしてるか気になってじいちゃんに聞いたけど「そんな子は来てないなあ」って。俺も何回か見に行ったけど、やっぱりあのこに会うことは無かった。 それが数年前の話。じいちゃんはもう引退して、のんびり暮らしてる。俺ももう人生でたい焼きを作ることは二度と無い。 そんでさあ、今日テレビ見てたらさ、出てんのよな、あのこが。 とらきば…どう?ちょっと後でググるから待って欲しい。アイドルなんだって。 老舗のたい焼き屋で食べ尽くす!みたいな名前のVTRでさ。すんげー食ってんの、めっちゃ美味そうに。もっと食べさせてあげればよかったなー。あれからたい焼きのこと好きになってくれたのかな。…俺のおかげだったりするのかな。 そこでなんか辛くなって、チャンネルを変えようとしたんだ。そしたらインタビュアーが聞くのよ、「今まで食べたたい焼きでいちばん美味しかったのはなんですか?」って。 「公園にあったシュミの良い屋台のがいちばんウマかったな!おいオマエ!どっかで聞いてたらオレ様に連絡しやがれ!」 そこでテレビを切った。 そんなこと出来るわけないじゃん。 だって君はもう​───────​

 

個人的に虎牙道を初見で読めないのが「わかる~」になりました。漣がたいやきを好きになったきっかけ、一体なんなんだ…と思っていたのでこんな素敵なエピソードだったらなぁとあたたかな気持ちになりました。

 

第3位(5票)

ペンネーム:匿名希望E さん

アイドル:東雲荘一郎

高校が一緒でした。男です。アイツスタイルいいし顔やたらと綺麗だし料理(菓子作り)上手いしトークも面白いのに神谷の保護者枠で尻拭いして回ってるのが妙にダサくて好きでした。恋愛的な意味で。 高二はクラス一緒だったんで掃除当番とか授業のグループにかこつけて話しかけに言ってました。 最後の思い出にしようと思って高三のバレンタインに「俺にチョコくれねぇ?」って頼んだらちょっと眉しかめて「……なんでやねん」って言われたけど当日ガトーショコラとトリュフのセットとかいう本命にあげるんかみたいなラインナップ渡されてビビりました。当然美味かったっす。クラスの女子とかにはばら撒き用のココアクッキーでした。今のところこれが俺の人生の一番の自慢です。 連絡先も知らないんで卒業してから何やってんのかな~とかぼんやり思いながら生きてたらテレビから「東雲荘一郎です」って聞こえて寿命縮むかと思いました。 今は彼女とカフェパレ推しです。彼女も東雲推しなのでこの話は墓場まで持っていきます。言ったら殺されますからね。

 

泣いてしまう、こんなの。おどけてワンチャンに賭けたらめちゃくちゃ嬉しい結果が返ってきて、本当に良かったね、Eさん…! になってしまいました。彼女さん、彼氏が東雲荘一郎の手作りスイーツ食ったことあるって知ったらどうなってしまうんだろう。

 

第3位(5票)

ペンネーム:いぬ さん

アイドル:柏木翼

私は普通の人より食べる量が多いです。 高校生のときに、文化祭の打ち上げで食べ放題の焼肉屋さんに行きました。食べ放題ということで、お金のことを考えずに食べられると思い、気の向くままに食べていたのですが、途中からクラスメイトの視線が私に向いてることに気づきました。視線に気づくと今まで聞こえていなかった声まで聞こえました。 「よくあんなに食べられるな」 「食べ放題だからって食いすぎじゃね」 急に恥ずかしくなって、その場から離れようとしたとき、 「わ〜、ここの焼肉屋さん、どれもこれも美味しいですね!」 少しわざとらしい大きな声が聞こえました。 そう言って元々座っていた席を立った翼くんは私の隣に座りました。 「ここの焼肉、美味しいですよね!オレさっきから箸が止まらなくて!」 そう言いながら、焼けたお肉に取り箸を伸ばす翼くん。そんな翼くんを見るやいなや、今まで私を見ていたクラスメイトたちはバツが悪そうに私と翼くんから視線を逸らしました。 「もうお腹いっぱいですか?よく食べるお仲間さんを見つけたと思ったんですけど……」 翼くんは取り箸でお肉を焼きながら言いました。 「ほら、お肉焼けましたよ!食べませんか?」 翼くんが私に問いかけます。 「……うん、食べる」 私がそう答えると、翼くんは満面の笑みを浮かべて、 「はいどうぞ!」 そう言って、私の取り皿に焼けたお肉を分けてくれました。 私は気が抜けたのか、安心したのか、分けてもらったお肉を食べながら大粒の涙をこぼしてしまいました。 翼くんは一瞬驚いた顔をしていましたけど、すぐにいつもの優しい微笑みを見せてくれて、 「我慢しなくていいんですよ、たくさん食べられるって素敵じゃないですか。他の人より食べる幸せを多く感じられるんですから」 翼くんはそのあとは一言も喋らず、泣きながらお肉を頬張る私の隣にずっと居てくれました。 あのとき翼くんが焼いて分けてくれたお肉は今まで食べた食べ物で1番美味しかったです。

 

翼ァ…!! 私が女の子だったら絶対好きになってしまう、こんなの。自分がコンプレックスに思うことを共有してくれて、良いことだって教えてくれる。間違いなくこの時から翼はアイドルですね…。

 

第2位(8票)

ペンネーム:シュモクザメ

アイドル:古論クリス

親父が漁師だった。 後を継ぐのが嫌で、足りない頭で必死に勉強して逃げ込んだ大学で言い訳みたいに海洋学を専攻した俺の前にあの人は現れた。 最初はいやによく喋る声も背も大きい奴だなと思った。他の教授連中は学者の塊みたいな陰気なおっさんが多くて、俺みたいな日陰者には居心地がよかった。だから助教は正直浮いてた。眩しすぎる金髪が違和感の象徴みたいだった。 毎回人数が減っていく講義に単位のために出続けていた初夏の日、台風が近づいていた天気の最悪な日だった。薄暗くてだだっ広い講義室には俺しかいなくて、助教は9時ぴったりにやってきた。ぽつんと座る俺を見て目を丸くして、孤高なシュモクザメかと思いましたなんて苦笑いをこぼした。いつもは子供みたいな助教のあんな顔は初めて見たし、あんな小さな声も初めて聞いたから、気が付いたらなんで海が好きなんですか?なんて口に出してた。多分いつもみたいに笑ってほしかったんだと思う。 それから一限が終わるまで二人でとにかくいろんな話をした。助教が見てきた世界中の海の話を聞いた。壮大すぎる夢を聞いた。俺の実家の話もした。いつもの調子を取り戻した助教は矢継ぎ早に質問をしてきて、あんまり喋るのが上手くない俺の話を嬉しそうに聞いてた。話しながらああ、俺も海が好きなんだなって気付いた。助教のこともよくわかんないけどいいなって思った。なんか、楽しかったんだと思う。 全員欠席なんてことはあの一度きりたっだけれど相変わらず人数のまばらな講義はその後も同じで、結局皆勤賞だったのは俺だけだった。助教の話が好きだった。憧れた。 一人暮らしにようやく慣れてきた春に助教はいなくなった。驚いたし、混乱した。共有できる人がいなかったから、その分勉学に励むことしかできなかった。 卒論が煮詰まっていた秋の深夜に、気分転換で付けたテレビに見覚えのある金髪が映って誇張抜きで椅子から転げ落ちた。助教だった。もう助教じゃなかった。アイドルユニットLegendersの古論クリスだった。あの夜のことはもうあんまり覚えてない。 卒業してすぐ地元に戻った。親父に頭下げてまた一から教わりつつ船舶免許を取った。ばったり再会した中学時代のクラスメイトとその年の内に結婚もした。 俺は海に帰ってきて、あの人は海よりも広い世界に漕ぎ出して行った。俺なんかが想像もできない世界に。 来月親父の船で初めて一か月の漁に出る。 荷物を減らすようにと耳にタコができるまで聞かされてはいるけれど、お守り代わりに一枚のCDを持って行くことと、灯台を見る度に思い出す人がいることだけは墓場まで持って行く秘密だ。

 

良すぎます…泣 クリスさんの魅力って、クリスさん自身の「海が好き!」という姿を通して人々に勇気を与えるところだなぁと再確認しました。こうして、たしかに大学助教・古論クリスの姿から海の魅力を教えてもらった人もいるのだということ、いつかクリスさんに絶対に知ってもらいたい。ペンネームも素敵です。

 

第1位 (10票)

ペンネーム:エンジェルくんって呼ぶな さん

アイドル:伊集院北斗

北斗とは大学で通年の科目が一緒になって知り合った。同じ高校出身の先輩が北斗と知り合いで、あんまり授業に出れないから色々助けてやってほしいと頼まれて面倒を見ることになった。 ノートやレジュメを写させてやるくらい別に構わなかったので引き受けたら、北斗は何か礼がしたいから自分にできることがあれば言ってくれと言い出した。あの伊集院北斗が。女の子が言われたら泣いて喜びそうなセリフだが生憎俺は男で、大したことは思いつかなくて、冗談半分で恋愛相談を持ちかけた。 当時、俺はサークルの同期で好きなコがいた。新歓で一目惚れして、そのコを追いかけてサークルに入ったほどだった。誰にも言ってなかったけど、北斗は実質他人だし、なんか経験豊富そうだしで話すのにちょうどよかった。 他に話せる相手がいなかったせいか、俺の恋バナは留まることを知らなかった。北斗は初め、俺がどう思う?って聞いたタイミングで、彼女が俺のことをどう思っていそうかとか、俺が彼女にどう接すればいいかとか、思うところを伝えてくれていた。 ある日、俺のマシンガントークの途中であいつが突然笑い出した。 「君、本当にその子のこと好きなんだね」 その時の俺は自分のマジさを笑われたと思ってかなりイラッとしたが、今思うとあの時の北斗は俺のマジさに感心していた。 その日から、北斗は俺がどう思う?って聞いたこと以外にも色々アドバイスしてくれるようになった。まずは眉毛をこまめに整えることから、ヘアセットのコツ、値段のわりに保ちがいいワックス、あのコが好きそうなファッション。どう見ても俺よりモテそうなやつの言うことなので軽い気持ちで素直に聞き入れていたら、夏休み明けには俺は別人のように垢抜けていた。 見た目が良くなったおかげか、俺が自信を持てるようになったからか、あのコともだんだん良い雰囲気になってきて、ここからが北斗の本領発揮だった。女の子が嫌がること、さりげない気遣い、デートの穴場……なんでも知ってた。 一方的に教えてもらってばかりだったので、せめてもの埋め合わせのつもりで、出れなかった授業の範囲でわからないとこあったら聞けと言ったら、意外にも色々質問してきた。芸能人もちゃんと勉強するんだなと失礼なことを思った。 俺が相談をする中で、北斗の方も昔の恋愛経験を少し話してくれる時があった。おいおいアイドルがそんな話していいのかよと思ったけど、そんだけ俺のこと信用してるのかと思うとなんか嬉しかった。 言っとくけど、あいつが芸能人だったからじゃなくて、男の俺から見てもマジでいい男だったから嬉しかったんだぞ。 最初の頃どうせチャラ男だと思い込んでちょっと冷たくしてた俺はバカだったと思う。あの時はごめんな。 北斗のおかげで、クリスマスに彼女に告白して俺らは無事付き合うことができた。付き合ってからも順調で、北斗も祝福してくれた。 後期が終わって北斗は無事単位を取れたので俺も晴れてお役御免になったわけだが、あいつは最後に「授業ではいつも助けてもらったし、俺も一年楽しかったから」って俺と彼女にライブのペアチケットをくれた。行かないわけがなかった。 Jupiterの知名度には似合わない狭いライブハウスで、俺は初めてアイドルの北斗を見た。期待通りのバチバチにキマったパフォーマンスと一緒に、ユニットの仲間と互いのミスを対等にフォローし合ったり、ふざけてじゃれ合ったりする北斗を。 それは見たことないほど無邪気な表情で、こいつこんな顔できたのかって思った。しかも、振りをミスって苦笑いしながらウインクしてもアンコールで汗だくになって歌ってても北斗はかっこよかった。 俺は北斗や北斗が教えてくれたことのほんの表面にしか触れてなかったような気がして、よく分からないショックを受けた。 学年が上がると俺の学部は通うキャンパスが変わったので、北斗と顔を合わせる機会は無くなった。あいつも事務所移籍だとかでバタバタしてて、もしかしたら大学も辞めるかもなんて噂を、学食で小耳に挟んだ。 付き合ってからも彼女とのことで悩むことはあったが、俺はもう北斗の授業の代返もノートコピーもしていないことを言い訳にして、あいつに相談するのをやめてしまった。以前北斗がくれたアドバイスを思い出しては、その通りにした方がいいとわかってるのに無視をした。 もう予想がついてると思うが、彼女には次の夏休みの前にフラれた。元カノになったあいつは今、あの日のライブとJupiterを入口に315プロの別のアイドルを推している。 ハマったのが北斗やJupiterじゃなくてよかった。もしそうなってたら俺は完全に正気を失ってた。 ……いや、いっそその方がよかったな。そしたら俺はお前がどれだけいい男でもお前を嫌いになれたよ。 結局、彼女が惚れてたのは北斗が作った俺のガワだった。でもそれは北斗が悪いんじゃない。俺に中身が伴ってなかったのが悪い。 そうだ。誰がお前のせいになんかしてやるかよ。俺はそんなダセー真似も、これ以上お前に振り回されるのもごめんだね。 見てろよ。これから俺は自力で男磨いて女心も勉強して、お前に負けないくらいのいい男になってやるからな。 そんな覚悟を決めるために、奮発して前からチェックしてた高めのワックスを買った。 家に帰って動画見ながら筋トレしてたら、北斗が世界一キマったヘアセットで俺が買ったワックスのCMに出てた。 クソが!!!!!!!

 

第1位は「エンジェルくんって呼ぶな」さん(ユウマさん)のこちらのエピソードでした! めちゃくちゃ良い~~~!!!!こちら読んだ時、思わず「アッヒャッヒャ!」みたいな声が出ました。良すぎて。北斗の言う通りにしたら最強にカッコいい「イイ男」ができあがる。スーパーカッコいいイイ男からのアドバイスなんで当たり前です。「結局、彼女が惚れてたのは北斗が作った俺のガワだった。でもそれは北斗が悪いんじゃない。俺に中身が伴ってなかったのが悪い。」これめちゃくちゃ好きです。きっとお前ならイイ男になれるよ。

 

以上、TOP5の発表でした! どれもめちゃくちゃ最高なエピソードばかりで、本当に順位をつけるのが惜しい…!エピソードをお寄せくださった皆様、投票してくださった皆様、本当にありがとうございました!

 

つのの好み賞

続いて、つのの好み賞の発表です。完全に私の好みで選びました。順位はありません。本選には進まなかったけど皆さんに知ってもらいたいエピソードを選びました。

 

つのの好み賞 その1

ペンネーム:神夜兎さん

アイドル:神楽麗

こんにちは。 私はとある音楽学校のヴァイオリニストです。 麗くんに一目惚れしたのは、彼がヴァイオリンの大会に出て少し経った頃です。 初めてその音を聴いた時、彼の音楽の優しさと愛の深さに涙しました。そして同時に、彼自身の美しさと愛らしさに目を奪われて、どうやって彼に近づくか、寝る間も惜しんで考えた。 整形したの。 幸い素材は似ていたらしくて、ヴァイオリニスト 神楽麗の顔にそっくりになるように、目を吊り上げて、小鼻を小さくして、所々ヒアルを打ち込んだら完璧。長かった髪を切って染めたら神楽麗の姉と言って差し支えない顔が出来上がって、身長が少し低いけれど、あとは白いパリッとしたブラウスにクラシックな服を合わせればよかった。 ヴァイオリンをやっていてよかった、とあんなに思ったことはありません。彼の近くに引っ越して、彼の進路の学校に転入。先輩として彼に接触して、"双子"なんて呼ばれるようになってからは簡単でした。 あなたの音楽に傾倒して、あなたもあなたの音楽も愛しているのは私だもの。ただ愛をそのままに奏でて、彼もその音楽に乗ってくれた……高校の音楽練習室に流れる、デュオ・コンチェルタンテをよく覚えています。 先輩、先輩と二重奏を強請るのが可愛かった。 ……その音楽では彼は納得しなかった。そんなことすら、今は愛おしいです。彼はどの舞台でも、彼のヴァイオリンを愛してくれているのがわかるから。遠くに行ってしまった彼が求めた別の音楽を、私も追い続けています。

 

えっぐい……! ゾワゾワと鳥肌が立つような狂気が淡々と語られていて、しばらくこの方のことしか考えられないほどのショックを受けました。すごすぎる。強烈なインパクトが脳内にこびりついて消えません。物凄い。

 

つのの好み賞 その2

ペンネーム:上田 さん

アイドル:花園百々人

アイドル? あー、今そういう感じなんですね。ちょっと意外かも。あ、すいません、こっちの話です。 で?その花園くんの話が聞きたいってことですか。花園くんと私が同級生って誰から聞いたんです?ま、誰でも良いけど。 別に面白い話とかなにもないですけど。 普通に、ありふれた話ですよ。こんなのバズりもしないので私じゃない人から話を聞くのが賢明じゃないですか? 花園くんと一回だけ一緒に水族館に行きました。 なんかもう、ホントそれだけです。 花園くん都あんま喋ったことなかったんですけど、水族館のチケット余ってるんだ、って言ったら何故か来てくれて。魚とか見たかも。あんま覚えてないです。 水族館とか口実なんで。あの顔面と水族館行って魚見る女います?いないでしょ。 私はずっと花園くん見てたんですけど、花園くんは魚見てました。魚なんか見てなにが面白いんだろ、って思ったけど、まあ、水族館に来たら魚見るか。そりゃそうですよね。 花園くんずっと魚見ててウケんなーって思った記憶だけあります。でも、魚見てる花園くん見るのは割と退屈しなかったかも。 え?ホントただ魚見ただけですよ。 魚見てバイバイです。あ、嘘。ご飯は食べたかも、流石に。何食べたかとかあんま覚えてないんですけど、あー、そうだ。海鮮だった。 花園くん、あんなに真剣に魚見た後に魚食べるんだなーって思って面白かったです。 それだけ?って何を期待してるんですか? 一回くらいヤッとけばよかったって?あー、それ友達にも言われました。 いやでも無理でしょ。だって花園くん、なんか怖いくらいに欲ないし。 軽くドン引きするくらいに、本当に性欲のかけらもなくて。ていうか、それ以前にほんと何にもない。超空っぽだなって思いました。 やりたいこととか、欲しいものとか、マジで何もない人って存在するんだーって思いました。 何もないからこそ、花園くんを誘いたいって思ったんでしょうね。他の男には無いものを期待して。 つまらない話ですいません。それでは。

 

最悪すぎる、この女! とゲラゲラ笑ってしまいました。本当に最悪。でも、百々人の近くには必ずこんな感じの女がいるでしょう。確信を持って言えます。偏見ですけど、高校時代に夢野久作とか読んでそうですね、上田さん。

 

つのの好み賞 その3

ペンネーム:まりか さん

アイドル:北村想

北村とは地元の中学の同級生でした。 なんか、全然女の子に興味ないですって顔してるのがカッコよく思えて、いいなって思って話しかけたりしてたら仲良くなりました。 中3の修学旅行、広島だったんですけど、その時も同じ班になれて、せっかくなら恋人になりたいなって思ってアプローチしてたんです。私、正直自分から告白は無いなって思ってて、だって男の人から告白されたいじゃないですか。だから待ってたんですけど、全然告白されなくて、結構脈アリって思ってたんですけど、ダメかなーって思ってたら、修学旅行の最終日に北村に呼び出されて告白されました。 「なんで最終日なの?」って聞いたら、 「なんか、振られて気まずいまま修学旅行まわるのやだなって思って」と言ってちょっと耳の端を赤くして手を繋いでくれました。可愛いですよね。 それからしばらく付き合ってました。 優しいし、デートしたらさりげなくエスコートしてくれるし、北村ってお兄さんいるからその影響なのか、ちょっと大人びててかっこいいんですよね。まぁ、エスコートって言っても田舎の中高生のレベルなんですけど。 北村ってクラスじゃそんなに目立たない方だし、というか運動あんまり得意じゃないからかめちゃめちゃ見学とかしてて、女子からは「うーん」って感じだったんです。でも勉強出来るし、顔だって、まぁ正直いちばんかっこよかったし、私すごく自慢の彼氏だったんです。 私だって当時はそれなりに可愛いって言われてたので、「なんであの北村?」って感じでした。でもそれがちょっとだけ優越感で。 北村もそう思ってくれてたんじゃないかな。 まぁでも、高校上がる時に私は私立の高校行ったんですけど、北村は別の高校行くって言うから別れちゃいました。だって、遠距離とか耐えられないし。 今アイドルしてるとこ見ると、なんか意外だなーって気持ちとやっぱりねーって感じの半々です。付き合ってる時とか、結構自信あるんだろうなってところはなんとなくわかってて、というかそこも好きだったんですけど、あんまり外には見せないようにしてるのかなって感じだったんで。 なんか喧嘩別れとかじゃないんで、普通に2人で撮った写真とかまだ実家にあるのだけが気まずいですね。北村にバレたら「捨ててよ」とか言われそう笑 来年の二十歳の集い、北村も来るんですかね。仕事あるかな。ふつーにもう今は好きとかじゃないし、私も彼氏いるし、会っても何もないんですけど。まぁ私のこと覚えてるかなーとかは気になります。 あーでもやっぱ会いたくないな。なんかめっちゃミーハーっぽいし。そういうの、北村嫌いそうだし。せめて懐かしくて良い元カノでいたい、みたいなそういうの、ありません?

 

「中学生の恋愛」の解像度が高すぎて脱帽しました。最後の一文がシビれますね。きっとまだスポーツ神経にモテ度が比例するのであろう年頃に北村を彼氏に選んだまりかさん、見る目があるしきっとそれを本人も自覚してそう…。

 

つのの好み賞 その4

ペンネーム:小沢 さん

アイドル:猫柳キリオ

とある商店街でバイトをしていた時の話です。お店の前でクリスマスリースの飾りつけをしている時、大きな松ぼっくりが飛んでいってしまったのを通りかかった猫柳くんが拾ってくれました。松ぼっくりを見つめる目が輝いていて、それがとても愛らしくて印象に残っています。今では我が家の猫にキリオと名付け、我が家のアイドルとして日々癒しをもらっています。

 

かわいい~! 何もかもが可愛いエピソードで、とっても大好きです。きっとキリオさんはその松ぼっくりからきゅぴぴーん! と小咄を思いついたのでしょうね。可愛い。小沢さんちのキリオちゃん(猫)も気になる。どんな顔をしてるんだろう。

 

つのの好み賞 その5

ペンネーム:ぷれなぎ さん

アイドル:握野英雄

思い返せば恋したあの日は初めて職質された記念日でした。そんなに怪しい風貌じゃなかったと思うのですが職質されました。でもこれが運命の瞬間でした。彼はそんなこと忘れてるだろうけど、私は忘れません。そうして私は毎日職質されそうな人コーデを組む日々を歩んでいます。

 

おまわりさんこいつです案件すぎる。意味が分からなくて大好きです。

 

つのの好み賞 その6

ペンネーム:彼の淹れた紅茶以外飲めない

アイドル:神谷幸広

高校三年生の頃、卒業する間際まで神谷くんと付き合っていました。彼は高校卒業後、夢を追いかけて海外に飛び立ってしまったのですが、それまでの数日間、当時上京して一人暮らしだった私の家で過ごしていてくれていました。フライト当日の日は朝早いからと言って私が寝ている間に行ってしまったのですが、飛び立って行った朝、いつも通り目覚めた時 キッチンから紅茶の匂いがしないことに気付いて 少し苦しくなりました。その後彼とは海外にいるということもあり、そのまま自然と疎遠になり別れてしまいました。今でも朝目覚めた時、カトラリーのぶつかる音や淹れたての紅茶の匂いがしないことを少し寂しく思うことがあります。

 

私の中の東雲荘一郎が「神谷らしいですね」と言ってます。日常の景色に、音に、匂いにまで彼がいたということを思い知らされるのって本当に切ない。素敵です。

 

つのの好み賞 その7

ペンネーム:しう さん

アイドル:渡辺みのり

高校時代、一個上の先輩でした。怖いけどかっこいい、憧れの人でした。卒業式で浮かれだった空気の中一人だけ静かに背中を向けていた姿を忘れられません。「卒業おめでとうございます」と一言だけ話したあの時は冷たい目で「別にあんたにとってはおめでたくないだろ」の言葉だけでした。今ではテレビの中で笑顔を見せてくれています。今彼に会いに行ったらきっと、冷たい目ではなく暖かなほほえみを見せてくれるんだろうな。泣きそうなので、絶対行きません。

 

「別にあんたにとってはおめでたくないだろ」←リメショ渡辺みのりが卒業式で言いそうな台詞ランキング、これに勝てるものありますか?

 

つのの好み賞 その8

ペンネーム:来年就活生 さん

アイドル:神楽麗

特に接点はありません。ただ2ヶ月に一回ぐらいの頻度で同じバス停を使っていました。今思えば「何でバスなんか使ってるんだ?」って感じですよね、多分お金持ちっぽいし。初めてみたときは綺麗で、でもちょっと怖いな〜という印象でした。目力というか、気迫が凄くて……。これは自分の想像なんですけど、バスを使うのに慣れていなかったのかな?と。一度だけ見ちゃったんですよね!座席に座った後に小さくグッ、と拳を握っていたところ。それでちょっとかわいいなと思って偶に見掛けると心の中で(がんばれ〜!)って応援してましたね〜。いやまさか16歳だったとは……。

 

わ、わかるな~~。迫真の表情でバスに乗っている麗さん、容易に想像できる。本当に「あのバス停で会えるかも」と思わせる、実在感の強さが好きです。就活、応援しています。

 

つのの好み賞 その9

ペンネーム:来年もポスドク さん

アイドル:桜庭薫

高2,高3とクラス替えなしで2年間同じクラスでした.今はもっと多いらしいですが私の時の理系クラスは女子が8人であとは男子でした.女子は基本的にちやほやされてましたね.私は身長が174あるうえに太ってるし性格もかわいげがないのと,あと自分で言うのもなんだけど成績も桜庭君と同じくらい良かったので,私1人だけは「名誉男子」扱いされてました.自分から自虐ネタにもしてたけど内心何でって思ってました. そんな中で桜庭君は他の女子にも私にも接し方が全然変わらなくて,あの頃はすごく救われる気持ちがしたんです. 勉強以外のことに無関心だっただけ?まあ多分そうですよね.

 

内容もさることながら、読点句読点が理系で嬉しくなりました。桜庭も、何かアンケートとか書くときはこうやって読点句読点を打つのかな。桜庭は他人に興味が無いタイプっぽそうですが、その態度によって救われている人もきっと多そう…。

 

つのの好み賞 その10

ペンネーム:あぐー さん

アイドル:都築圭

小学生の時、家族で遊びに行った街で迷子になってしまった時があって。丁度雨も降ってきてしまって、泣きながらどこかの商店街の軒下で雨宿りしていたら、あの人が通りかかったんです。 大人なのに傘もささずに、でもすごい楽しそうで、びっくりして涙が引っ込んじゃったんですよね。そしたらふと目があって、「良い天気だね」って話しかけてきたんです。雨なのに?って聞いたら「雨音だけが奏でられる、特別な演奏会だよ」と笑うから、じっと耳を澄ませたらさっきまでは気づかなかった色んな音が聴こえてきて。親が探しにくるまで夢中で聴いてました。 いつの間にかいなくなっていたけど、アイドルだったんですね。あの日から世界が音楽で満たされています。

 

最後の一文が本当に好きです。圭さんはいつも音楽に耳を傾けていますが、その感覚はなかなか得がたいものだよな~と思っています。世界に音楽が満ちている感覚を知れたことが、その後この方の人生をどれほど豊かにしただろうと考えると、嬉しくなります。

 

つのの好み賞 その11

ペンネーム:匿名希望 さん

アイドル:天峰秀

夏に動画サイトで曲作ってる人たちのオフ会で会った。 めちゃくちゃ曲の趣味も年代も合うからタメかちょっと上くらいだと思ってたし、事前の会話も「東北から出たことないから東京で迷いそうw」「俺が案内してあげるよ」みたいな。 正直好きだったんだけど、実際来たの子供で超冷めた。お小遣いで案内するつもりだったん?w 顔は整ってるとは思うけどねー

 

この投稿者、315プロ総合スレとかでこのエピソード書いてそう。天峰のPは絶対この書き込みが天峰の目に入らないように尽力してください。

 

つのの好み賞 その12

ペンネーム:なむねむ さん

アイドル:硲道夫

高3の時ミッチーにめっちゃ助けられたよ✌️ 昔からなんとなく美容系の学校に行きたいな〜って思ってたんだけど、ウチ勉強全然がんばってこなかったし飽きっぽいしで周りからめっちゃ反対されてて超悩んでたの。でもウチも日頃の行い?からそうなるのなんとなーく分かってたからもういいや〜笑ってなっちゃってて、でもその事ミッチーにちょっと話したら「君の夢を君が否定してどうする、もっと先生を頼りなさい」って!!!!あの時のミッチー、マジでかっこよくって好きになるところだった笑その後色々勉強とか受験のいろんな方法?とかも一緒に調べてくれて〜、しかも私だけじゃなくてクラス全員だかんね!?マジ先生すごいって思った!!!今の夢はね、いつかミッチーのヘアメイク担当すること〜!夢にむかってがんばる楽しさはミッチーが教えてくれたからね!絶対担当するかんな〜!待ってろミッチー!!!

 

ごめんなさい、「ギャルに好かれる硲道夫」がめちゃくちゃ好きなので選ばせていただきました。絶対夢を叶えて欲しい。

 

つのの好み賞 その13

ペンネーム:鯉党の女

アイドル:兜大吾

あの子が継いだら、その伴侶になるのはうちだったらしいです。歳は近い方がええじゃろって、いらん気遣いでね。結局嫁いだのは姉さんでしたけど。 ほら、料理の上手い子でしょう?うちももっと精進せぇゆうて、家のもんによぉ叱られました。……うちの作ったお煮付け食べて、うまいのーって笑ってくれて、嬉しかったなぁ。あがに褒めてくれたんはあの子だけじゃった。 全部、ぜんぶ、わやになりました。 恥ずかしいけぇ、内緒ですよ。

 

最後の一文がいじらしすぎて泣いてしまいました。きっと、絶対に幸せになってほしい。本当に可愛らしいです。いっそ私がこの子を嫁に貰おうかな。

 

つのの好み賞 その14

ペンネーム:KK-MANgさん

アイドル:山下次郎

競馬場に通っていた頃によく姿を見かけて、なんか背が高い人がいるなあぐらいの認識でした。 たまたま近くの観戦席に座った時自分の馬券を落としてしまって、拾ってもらったことがあるんです。その時「ああ、俺もコイツ買おうか迷ったなあ。お互い頑張りましょうね。」と声をかけてもらい、頑張るのは馬だけどなあ。と思ったのを覚えています。彼アイドルになったんですね。

 

次郎、多分投稿者さんと離れた後に「ま、頑張るのは俺じゃなくてお馬さんなんですけどね」とかひとりごとぼやいてそうですよね。競馬場にいる姿の解像度が異常に高くてお気に入りのエピソードです。

 

つのの好み賞 その15

ペンネーム:ぺぱっと さん

アイドル:冬美旬

背の順の1番前。1人だけ仁王立ちのようなポーズを取らされ晒し者にされる、恥ずかしいポジション。 それがうちのクラスでは俺で、隣のクラスでは冬美旬だった。中学2年の頃だ。 俺は背が低いのもいじられるのも嫌で嫌で堪らなかった。背の順で並ばされるたびに憂鬱で仕方なかった。だけど俺よりも背が低い冬美は、体育の合同授業でも体育祭でも澄ました顔で俺と同じように腰に手を当てていた。なんかそのポーズがやたらと似合っていて、学年で1番背が低いのにまるで後ろの列全員を冬美が率いてるような貫禄があった。 俺は高校2年になって170cm台になったけどテレビで見かける160ないくらいの冬美はあの時と変わらず俺よりも遥かに堂々としてる。身に纏っているのは赤いブレザー風の衣装なのに、思い出すのは白い体操着でまっすぐ前を見ながら腰に手を当てていた姿だった。

 

むちゃくちゃイイ……旬って小さいけどちょっと貫禄があるというか、桜庭と同じような「気にしなさ」があって、良いですよね。まるでクラスを率いているかのように腰に手を当て堂々と立つ旬、見てみたいです。

 

つのの好み賞 その16

ペンネーム:うみっち

アイドル:伊瀬谷四季

帰り道、階段の上(二段差)から無意識に「好き」っていっちゃったことがありました。 四季がそのとき振り返って「え?」っていってきたので焦って「四季。今日楽しかったね」と誤魔化して帰ってしまいましたがあのときの真っ赤な顔は忘れません。 ちなみにそのあと告白とかも一切しなかったので付き合うこともなかったです。 片思い万歳🙌

 

あまずっぺ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!助けてくれ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!眩しすぎる!

 

つのの好み賞 その17

ペンネーム:ぼたん さん

アイドル:東雲荘一郎

高校3年生のバレンタインにチョコをあげました。放課後の下駄箱近くで、やっとやってきた東雲くんを目で追いながらそわそわしてる私に、優しさで「神谷ならまだ教室ですよ」と話しかけてくれたのに、反射で「違う!」と大きな声を出してしまって恥ずかしかったのを今でも思い出してしまいます。少しびっくりしながらもありがとうございます、と受け取ってくれました。それだけだけど、同級生で良かったな

 

一旦神谷に怒られた方がいいです。と思いました。この、「自分に向けられた好意をきっと神谷に対するものだと片付けがち」な東雲さんのエピソードめちゃくちゃ多かったです。罪な男~

 

つのの好み賞 その18

ペンネーム:雪乃

アイドル:葛之葉雨彦

葛之葉の末席に名を連ねていた者です。明言はされていませんでしたが、雨彦さんの婚約者候補の一人でもありました。とはいえ二人きりでちゃんとお話しする機会すら叶いませんでしたが。 ある雨の日に、偶然母家ですれ違った私の目を見て『好きな場所へ行くのがいい』と仰られました。しばらくして彼はアイドルとなり、私はあの家を出ました。 手を引いてくれたのは雨彦さんです。彼のことが好きでした。もう二度とお会いすることはないでしょう。

 

ああ…。自分らしく、ということにきっと雨彦も悩んでいただろうなと思うのですが、彼女が家を出て好きな場所で生きるための手を引き、道を照らしたのは間違いなく雨彦。たった一言で霧を晴らしてくれるような言葉が素敵です。

 

つのの好み賞 その19

ペンネーム:はるか さん

アイドル:渡辺みのり

一目惚れです。未だに好きです。

 

予選の最後を飾ったエピソードです。このエピソードを一目見たときから、予選を締めくくるのはこの一言がいいと決めていました。この一言が、みのりさんに寄せられたものというのも良い。

 

つのの好み賞 その20

ペンネーム:詩 さん

アイドル:華村翔真

歌舞伎って血筋の世界でもあるんだけど、実力があれば部屋子養子からってのもありえるの。娘さんをもらって婿養子になったりもあるし、そうして名前を継ぐなんてザラにある。 華村翔真は期待されていたんだけど、やっぱり入るのが遅かったのかなぁ、いわゆる歌舞伎の名家には支援されなかったからチャンスが少なかった。 多分続けていればきっとチャンスも増えてきただろうけど、それだと遅すぎるって思ったのかな。アイドルになるって聞いた時はびっくりした。華村翔真にとって大切なのは「歌舞伎」じゃなくて「自分が目立てる場所」だったのかなって少し悲しくもなった。 でもそうだよね、翔真くんが憧れたのはあの舞台の上で燦然と輝く俳優たちなんだもの。あの俳優みたいになりたいって思って、でもそれが違う形で叶えられると思ったら挑戦すべきって今は思う。 今でも憧れた和の伝統、輝く姿を誇りにまっすぐに歩き続ける翔真くん、誇らしいなって思う。 歌舞伎の世界じゃ女性はただの影でしかないけれど、そんな翔真くんを一番近くで支えて、支援ができて嬉しかったな。今も翔真くんの芸の1番のファンだって気持ちで応援してる。 きっと翔真くんは私のことなんて忘れているかもしれないけれど、貴方を信じてあなたが舞台で輝けるようになるまで、家の中のご贔屓は誰って言われて名前を出すほどに好きだった。私は翔真くんのあの舞台への輝きの憧憬を忘れない。 今のアイドル華村翔真を作ったのは、きっと歌舞伎役者・華村翔真なんだろうね。華村屋なんて屋号がなくても、自分の苗字を屋号にして大向こうに言わせるなんて、華村翔真じゃなきゃできっこないよ。 ずっと好きだったな。 あの暖簾の隙間から見えた、鏡に向かって紅を挿していたあの日も、大きな着物で立ち振る舞いを学んでいたあの日も。私はただの彼の、婚約者、そう婚約者でしかなかったけれど、──彼が舞台の上で真ん中に立つ日をずっと夢見ていたから……。私だけのアイドルだったのにな、彼の眼中にはなくても私に取ってはずっと彼がアイドルだったよ。

 

切ない。彼がアイドルになる前から、ずっと彼を応援していた彼女が幸せになれますように。歌舞伎の知識がなければ生み出されないエピソードで、よりリアリティを生んでいてとても好きです。

 

他にもたくさん、本当にたくさん好きなエピソードがあるのですが……おそらく書ききれなくなってしまうので、一旦その20でとめておきます。お付き合いいただき、ありがとうございました。本当はその5でとめておくつもりでしたが、増えに増えてこうなりました。

 

エピソード数ランキング

最後に、おそらく気になっている方も多いと思うので各アイドルに寄せられたエピソード数のランキングを発表します。

 

1位 硲道夫(19件)

2位 山下次郎(16件)

3位 握野英雄(15件)

    花園百々人

4位 木村龍(14件)

       北村想

5位 舞田類(11件)

    古論クリス

6位 天道輝(10件)

    鷹城恭二

    渡辺みのり

    黒野玄武

    葛之葉雨彦

7位 桜庭薫(9件)

    ピエール

    秋山隼人

    紅井朱雀

8位 円城寺道流(8件)

    天峰秀

9位 信玄誠司(7件)

    九十九一希

10位 伊集院北斗(6件)

      柏木翼

      冬美旬

      若里春名

      東雲荘一郎

      橘志狼

      伊瀬谷四季

11位 天ヶ瀬冬馬(5件)

      都築圭

      神楽麗

      榊夏来

      神谷幸広

      卯月巻緒

      水嶋咲

      大河タケル

      眉見鋭心

12位 姫野かのん(4件)

      牙崎漣

      秋月涼

      兜大吾

      御手洗翔太

      蒼井享介

      猫柳キリオ

      華村翔真

13位 岡村直央(2件)

      蒼井悠介

      アスラン=BBⅡ世

 

こんな感じでした。S.E.M理系、強かったですね~!! 全エピソードはこれまでの記事で確認できるので、皆さんのお気に入りを見つけてくださいね。

 

それでは、本企画「#私だけのアイドルだったのにな選手権」はこれにて終了いたします!皆様のご協力、本当にありがとうございました。

 

なお、企画にお寄せいただいたエピソードは、ご自分の考えたエピソードに限りご自由に使っていただいてかまいません。

もし作品になったり本ができたりしたら主催までご一報いただけると嬉しいです。楽しいし、嬉しいので。

 

これからも個人的に皆様の幻覚をお待ちしております。良い幻覚が見えたらぜひ津野はえ太まで!

#私だけのアイドルだったのにな選手権 本選

皆様、お疲れさまです! つのです!

#私だけのアイドルだったのにな選手権、いよいよ本選になりました。予選ではたくさんのご投票、ありがとうございました!感想も楽しく眺めさせていただきました…。

さて、355エピソードあったエピソードも予選を経て20エピソードに絞られました。それぞれのブロックで一番得票数が多かった珠玉のエピソードが集まっています。

本選では、この20エピソードの中から好きなエピソードを1つだけ選んで投票してください!よろしくお願いいたします。

なお、同ブロック内で同じ得票数を得たエピソードはいずれも本選に進出しています。(だからエピソード数が16より多いんやね~)

 

また、今回選ばれた16エピソード以外のエピソードについても、どれも本当に素晴らしく最高のものばかりでした…。天才しかおらん…。予選第1~第16ブロックは今後も公開いたしますので、ぜひまだチェックしていないブロックがあればぜひ読んでみてくださいね~!

 

では、いよいよ本選です。

続きを読む

#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第16ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第16ブロックです。とうとう最終ブロック……!心残りのないよう投票をお忘れなく!!

 

また、今回は最後に大事なお知らせもございます。チェックしていただけると幸いです!

 

今回の投票期間は2月3日0:10~2月4日23:50です。ご注意ください!投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

  • 1.花園百々人
  • 2.北村想
  • 3.伊集院北斗
  • 4.鷹城恭二
  • 5.桜庭薫
  • 6.紅井朱雀
  • 7.冬美旬
  • 8.葛之葉雨彦
  • 9.天道輝
  • 10.舞田類
  • 11.黒野玄武
  • 12.ピエール
  • 13.秋山隼人
  • 14.円城寺道流
  • 15.古論クリス
  • 16.硲道夫
  • 17.木村龍
  • 18.山下次郎
  • 19.天峰秀
  • 20.握野英雄
  • 21.渡辺みのり
  • 投票はこちらから!

1.花園百々人

花園百々人のことは私だけが知っていた。隣の席の私だけが彼を知っていた。授業中の顔も。体育の時ジャージを好むことも。昼食はいつも学食で食べていることも。いつも上っ面だけの友達に囲まれていることも。そして賞を受賞したにもかかわらず席に着いた瞬間だけ残念そうな顔を見せたことも。私だけが知っていた  そして彼だけが私を知ってくれていた。「今日はそのピアスなんだ。かわいいね」と、誰にも言われなかったことを花園くんだけが褒めてくれた。私はその気持ちを言葉にも出来なかった。  ある日の放課後居残りをして勉強をしている花園くんがいた。「今度模試だからねーちょっとでも勉強しとかないとね」彼の模試は10人しか受けていないのではないかと勘違いするほど順位が高い、それでも謙虚に一人で放課後の教室で勉強する。私はそれを二人にする時間が好きだった。私も花園くんと勉強するうちにだんだんと成績が良くなっていった。つまらない高校生活がだんだんと花園くんのおかげで楽しくなってきた  模試の結果が帰ってきて、花園くんはまた全国で10本の指に入る順位だった。「やったじゃん!」「やっぱ百々人は天才だな」クラスの何も知らない人たちは百々人くんに声かける。遅くまで家に帰らずに教室で勉強をしていたのをしらないくせに、こういうときだけ褒める。そんな人たちには反吐が出る。それでも百々人くんは「ありがとう。先生の分かりやすい授業や、僕の苦手なところを教えてくれたクラスのみんなのおかげだよ」と謙遜で返した。目があったような気がする。私も少し教えたし、あの模試の結果には私の頑張りが少し入ってるかも。いつも放課後に一緒に残って勉強したし、そうに違いない。  次の日、百々人くんは遅刻してきた。みんな高成績の人が遅刻したくらいでは心配しない、先生も「社長今頃出勤かぁ?」と笑い飛ばしてる。でも私は違う。「お母さんとちょっと喧嘩しちゃって」と百々人くんは笑いながらみんなに言った。「かわいー」「どんなお母さんだよ」とクラスの野次が百々人くんに集まるなか自分の席に着いた百々人くん。あの顔だ。賞を受賞したときの顔。残念そうな顔。ここから出れないことを察しながら光に向かって足掻こうとする顔。  放課後、彼に聞いてみた。なにかあったの?彼は「何でもないよ」と笑っていつも通り教科書を開いた。模試が終わったのに勉強を始める彼。ちょっとまってと私は鞄からあるものを取り出す。「ピアッサー?」ピアスを開けるための道具。百々人くんの表情から模試の結果に満足できなかったんじゃないかということを伝え、気分が変わるかと思ってと彼に提案する。自分で自分の体を簡単に変えられるものだから「そっか、じゃあ開けてほしいな。やっぱり最初は怖いからね」百々人くんは簡単に了承し、髪をかき上げてまるでミケランジェロの像のような、美しい顔から肩までのラインを出して私の利き腕の右に合わせて左耳を出してくれた。カチン、私が百々人の体に穴を開けたそれだけで私は気が狂いそうなほどの高揚感に包まれた。私が開けたのだ。ほかの誰でもない私が。「あんまり痛くないんだね。なんだか君が言ったみたいに気分が違うかも。ありがとう」すかさずワンポイントの新品のピアスを差し出す。これ似合うと思って。黄色のワンポイントのピアス。ピアス入れとかないと穴はすぐふさがっちゃうし、ワンポイントなら目立たないからと。本当は私だけが気付けるように目立たないワンポイントを渡した「わぁありがとう。似合うかな?」とても似合う。彼の色に私が加わったような気がする。右耳はまた今度ということで勉強を始め、日が暮れるころに解散をした。次の日また百々人は遅刻した  曰くまたお母さんと喧嘩したらしい。ピアスのことだろうか申し訳ないことをした。彼は「今日から美術の提出物があるから一緒に勉強できないんだ」とこっそり私にだけ聞こえる声で耳打ちをしてくれた。ごめんねーと手を合わせて謝ってくれる彼に大丈夫だよと笑顔で伝えるが心境は穏やかではなかった。彼との二人の時間が減っていくのを内心恐れていたからだ。誤解の内容に伝えておくと私たちは所謂付き合ってはいない。ただ放課後にクラスの男子と勉強するのが幸せだと思っている。思ってしまい始めていたところだった。  彼は美術でも銀賞などを取りどんどん有名になっていく。天才だのちやほやされて周りに神輿を担がれている。そして久しぶりに二人きりで勉強できる時間を作ってもらった。百々人には私の分からないところを教えてもらう体で誘った。  私はそこで思いのすべてを告白するつもりであった。そうすると私の百々人は私の知らないぴぃちゃんという単語を口から出してアイドルになることを言い始めた。待って百々人なにそれわたし知らない。私の知らない顔をしないで。そんな幸せそうな顔しないで。「僕に生きる意味をくれたんだ」「僕は生まれ変わったんだ」置いてかないで。「そうそう、ピアスも新しくしたんだ。そしたらぴぃちゃんがね似合ってるってほめてくれて。ピアス変えたこと誰も気づかなかったんだ。でもぴぃちゃんはすかさず気づいてくれて嬉しかったなぁ」私は大粒の涙を目に浮かべながら彼の心の底から幸せそうな顔見つめながら話を聞いていた。私だけが知っていた花園百々人はいつのまにか私の知らない誰かの元へと羽ばたいて行っていた。それだけでただの一学生なら涙を流すには十分ではないか。『花園くん。幸せになってね』私は涙を流れるのをぐっとこらえながら、この世に一つだけって笑顔を浮かべた。「もう幸せになったよ。ぴぃちゃんのおかげでね」  それから私と花園百々人は疎遠になってしまった。アイドル活動も忙しいらしいし、家事を覚えるのも大変らしいし、ぴぃちゃんという人物と仲がいいらしいのは知ってる。クラスの中心人物だからいやでも耳に入ってくる。例え私が花園百々人にとって数ある色の一つでも、例え花園百々人自身が私を忘れたとしても。このささくれた心を支えるのはあの左耳に開けた私の穴だ。

 

2.北村想

想楽くん、前髪を数センチ切っただけでも気付いてくれるし、ネイル変えた日もすぐ言ってくれてました。よく見てるねって言ったら「アルバイトの影響かもねー?」なんてはぐらかしてたけど、私のことが好きだから目で追っかけてるの気付いてました。は私が目で追いかける側になっちゃいましたけどね。

 

3.伊集院北斗

伊集院くんと中学3年間同じクラスでした。 周りの女子たちからは3年間同じクラスで羨ましいと何度と言われましたが、私は正直伊集院くんのような女たらしは嫌いです。女子に対する彼の褒め言葉とか、全部寒気がする。鳥肌が立つ。新手の厨二病か?とすら思いました。 でも、彼の弾くピアノは好きでした。 私自身小さい頃からピアノを習っていて、将来はピアニストになりたいと思っていたので、学生時代も練習練習の日々でした。 小学生の時から合唱コンクールのピアノの伴奏を担当していたので中学でもずっとピアノを弾きたいと思っていたのに、伊集院くんに1度も勝てませんでした。 伴奏希望者が多かった場合、先生の前でピアノを弾き、誰の演奏が良かったかを決めるのですが、 1年生の時も2年生の時も、最後の年も。 勝てたことがありませんでした。 私は友達と遊ぶのも我慢して、学校が終わったら家でピアノの練習をする生活を送っていたのに。 女子と遊んでヘラヘラしてる伊集院くんには敵わなかった。 力強く、それでいて繊細な演奏。 ピアノを弾いている時だけは、とてもかっこよかった。 私はあんなに練習したのに、いとも簡単に超えてくる。 天才とはこういう人の事を言うんだろうなと思いました。 悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。 選ばれなかったことが悔しい。でも、それ以上に、 やっぱり彼が演奏するピアノが好きだと確信してしまったんです。 何を言われるか分からないから彼の前で泣きたくなかったのに、溢れ出した涙が頬をつたって制服を濡らした。そんな私に彼が言ったんです。 「泣かないで。今回は譲るよ」 は?ふざけてるの? 私がどんな気持ちで練習してきたかしらないくせに いとも簡単に人に譲るのかこの人は。 次の瞬間、私は怒鳴ってました。 「譲られたって嬉しくない!あんなにいい演奏しておいて!喜びなよ!人に簡単に譲るんじゃないわよ!」 自分でも驚くくらいの声量で。 彼は物凄く驚いた顔をしていました。あんな驚いた顔の伊集院くんは見たことありません。 キョトンと目を丸くして、何か言いたげに口を少し開けた綺麗な顔。 ああ、やっぱり大嫌い。 その後、私は3年間伊集院くんの伴奏でソプラノのパートを歌い、合唱コンクールは無事に終わりました。 歌うことも好きだけど、やっぱりピアノが弾きたかった。でも不思議なんです。彼の演奏が心地よくて、他の人のピアノじゃ歌いたくなくなるの。 合唱コンクール後に伊集院くんに「あの時はごめん」って謝られた事も覚えてます。謝られても困るのに。 「キミが弾くピアノが好きなんだ。だからあんな事を言ってしまった。本当にごめん。」 捨てられた子犬のような顔をしてました。 「キミが弾くピアノが好き」だって。 そんなのこっちのセリフだけど、彼には伝えられなかった。 卒業までの僅かな期間、音楽の先生の提案で市のピアノコンクールに2人で出ることになりました。 てっきり1人ずつ弾くんだろうな、伊集院くんとまた比べられるのか、と少し乗り気では無かった私に伊集院くんが「連弾しよう」と言ってきました。 なぜ連弾……?1人ずつ弾いた方が絶対目立つし、伊集院くんのピアノの良さはそっちの方が出るんじゃないか、と反論したら彼はキョトンとした綺麗な顔で 「言わなかった?キミが弾くピアノが好きだって。」 「一緒に弾きたいと思ったんだけど、ダメかな?」 なんて言ってきたんです。 なんかムカついたけど、断れなかった。 私も伊集院くんが弾くピアノが好きだから。 2人で曲を決めて、休み時間や放課後に2人で練習して、あの時間だけはとても幸せでした。 伊集院くんは天才なんかじゃなくて、ちゃんと人が見てないところで練習しているってことも初めて知ることが出来て、見た目で決めつけちゃダメだなと、彼のことをただの女たらしと決めつけるのは見直そうと思いました。 コンクールでは、連弾の部で優秀賞を頂きました。表彰状には私と伊集院くんの名前が書かれていて、どこかくすぐったい気持ちになりました。 ステージ上で表彰されたとき、 「キミのおかげだよ、ありがとう」 そう言って私の手を取り、指先にキスをしてきた彼。 湧き上がる会場。 真っ赤になる私の顔。 前言撤回。やっぱり嫌い。この女たらし。 あれから数年たって、私は本格的にピアニストを目指して音楽大学に通っています。 大変なことばかりだけど、ピアノを弾いている瞬間が私が1番輝ける瞬間だと思ってます。 その後の伊集院くんの事は同級生の女子が騒いでたので知っています。怪我でピアノから離れてしまったこと、モデルをしていたこと、今はアイドルになっていること……。 怪我のことを心配していましたが、テレビや雑誌で女性ファンからキャーキャー言われていて、相変わらず女たらしみたいで安心しました。 未だに部屋に飾ってある表彰状を見ると、あの時の楽しかった連弾の風景が脳裏を過ります。 いつかまた彼のピアノが聴ける日が来ればいいな。 今はピアノではなく、歌やダンスで人々を魅了していく伊集院くんの事、陰ながら応援しています。 また、連弾したいです。

 

4.鷹城恭二

家の最寄りのコンビニに鷹城さんが勤めていました。最初は無愛想でローテンションな人だな。と思っていましたがピエールさんとみのりさんとお話ししている時の笑顔に一目惚れしてしまいました。それからは鷹城さんがレジ担当の時にちょっとスイーツとか買って女子力アピール笑をしたりしていました。今思い出すとヤバい奴ですね!ある時期からコンビニで見なくなってバイトを辞めたと噂で聞きました。けっこうショックでしたがアイドルをしている鷹城さんのポスターがコンビニに貼ってあって驚きました。キラキラしているアイドル姿の鷹城さんもかっこいいけど、コンビニバイトの鷹城さんの方が私は好きです。ずっとこのコンビニに聖地巡礼したいと思います!

 

5.桜庭薫

桜庭とは高校の同級生でした。 卒業後は疎遠になってたんだけど、たまたま東京の病院で再会しました。 あいつは外科、俺は内科で病棟は違ったけど何かと飲みに行ったり、立ち話したりする仲でした。 俺と話してるとたまに出る方言とか苦手だった古典の先生の話とか。 酔ったら案外ノリが良くて、実は歌が上手い事とか。 俺だけが知ってる桜庭の顔が今でも忘れられないです。 俺、本当は引き止めたかったんだ お前が突然アイドルになるって言った時は唖然とした。 何言ってんだこいつって。 でもその目があまりに真剣で真っ直ぐだったから、応援するよって陳腐な言葉しか返せなかった。 あの時やめとけよって言ってたら、俺まだお前と一緒に安い居酒屋に行ったり、病院の休憩スペースで何でもない話したりしてたかな。 俺、桜庭がまだ医者だった頃に戻れたらなんて、たまに考えるよ。 ...でも、きっと俺は止められないだろうな。 今の桜庭を見たら尚更。 俺は今でも同じ病院の内科に務めています。 病室のテレビでたまに桜庭の姿を目にするけど、画面越しってやっぱり遠く感じます。 たまにはここに帰ってこいよ。 現役時代に受け持ってたお前のこと応援してる患者さんとか、...俺とか。 いつでも桜庭のこと、待ってるからさ。

 

6.紅井朱雀

小学校5、6年生の頃同じクラスでした。 中学からは私が引っ越してしまって、別々になってしまったので、小学生の時の話を聞いてください。 朱雀くん、お父さんもお母さんも強くて優しくてたくましくて学校でも有名だったんですけど、朱雀くんが女の子苦手だったからか、女子人気は当時そんなじゃなかったんです。 クラスには他にも足が早い子や勉強ができる男子が居たので、女子人気はその子たちの方が凄かったです。 でも、私は朱雀くんが1番カッコイイと思ってます。 小学5年生の頃です。 下校中に横断歩道で見ず知らずのおばあちゃんと朱雀くんの姿を見つけました。 同じクラスになって、何回か席も隣になってるし、登下校中に会うこともあったので、朱雀くんの家の方向と違う方に歩いていくのが気になりました。 「家と反対方向じゃない?」と声をかけに行くと、朱雀くんの両手には重たそうな荷物がありました。隣にいたおばあちゃんが「この子がねぇ、家まで荷物持ってくれるっ言ってくれてねぇ」と説明してくれました。 朱雀くんはいつもそうです。 困ってる人がいたら真っ先に飛んでくる、ヒーローみたいな人。弱いものいじめを許さない正義感が強い人。 おばあちゃんは「家が遠いからいいって断ったんだけど、平気だって言うもんだから甘えちゃってねぇ」とニコニコして話してくれました。その横で朱雀くんは「ヘーキだぜ!」って嬉しそうにしてました。 友だちが親切にしてるところを見て私も感化されたのか、朱雀くんが持ってる荷物に手を伸ばして「私も手伝う」と、2人でおばあちゃんの荷物を持つことにしました。 おばあちゃんが言っていた通り、お家はそこから歩いて40分くらいかかるところで、通ったことの無い道を通るので内心不安でしたが、横に朱雀くんが居たので不安がってちゃいけないと思って平然を装ってました。 おばあちゃんの家に着いた頃には、すっかり夕方になっていて、おばあちゃんが家まで帰れるかと心配してくれましたが私も朱雀くんも「大丈夫」と答えてその場を後にしてしまったんです。 通ってきたはずの道を2人で戻っていくのに、一向に知ってる道に出れなくて。 暗くなってきて、頼りない街灯のぼんやりとした灯りがポツン、と路地にあるばかりで。 おばあちゃんの役に立てたことでさっきまであんなに嬉しかったのに、一気に怖く、寂しくなって。 何度も同じ道を2人でグルグルと歩いて。 ついに私は泣き出してしまいました。 「怖いよ」 「帰りたいよ」 「パパとママに怒られちゃうよ」 なんて言いながら、恥ずかしながらわんわん泣いていました。もうすぐ最高学年になるんだから、1年生の見本になるようにと先生に言われていたのに。 こんな姿1年生に見せられない。 暗くて怖いし帰り道が分からないし。 涙は止まらないし。 自分でもどうしていいかわからなくてパニックになってました。 そんな時でした。 「大丈夫」 そういって朱雀くんは泣きじゃくる私の手を握ってくれました。女の子が苦手で普段は自分から積極的に女子に絡みにいかないあの朱雀くんが。 「俺がいる。1人じゃないぜ」 私をあやす様に優しく声をかけて、安心させるかのように力強く手を握ってくれました。 朱雀くんの手がとても温かくて、朱雀くんの言葉もすーっと、私の中に入ってきました。 ひとりじゃないんだ、という安心感が凄かったんです。 泣き止んで涙目の私の手を引いて「こっちだ」って歩いていく朱雀くんの背中がとても大きく見えました。 その後すぐ、「こんな時間に小学生だけで出歩いている」と不審がったお巡りさんが近くの交番に保護してくれました。 来た道を戻ろうとグルグルしていたはずが、いつの間にか隣町まで歩いていたそうです。 私の両親と、朱雀くんの両親が交番まで迎えに来て、私を見るなり母が抱きついてきて、安心してまた泣き出してしまったのを覚えてます。 その横で朱雀くんはお母さんから怒られていた様な気がします。私のせいで怒られてごめんね。 後から聞いた話ですが、お巡りさんが私たちを見つけた時、私だけじゃなく朱雀くんも涙目だったそうです。 自分も泣きたいくらい不安なのに、私には一切そんな顔見せないで、私の手を引いて歩いていた朱雀くんは、 クラスの男子の誰よりもカッコよかったです。 引越して会えなくなってしまったけれど、テレビに朱雀くんが出る度に微笑ましい気持ちになります。 まさかアイドルになってしまうなんて思ってませんでした。 これからもカッコイイ紅井朱雀をたくさん見せてください。応援しています。

 

7.冬美旬

中学の時、体力測定のシャトルランを本気でやる姿を見て好きになりました。体力なさそうだし、上手に手を抜きそうって思っていたので本当に意外で好きでした。

 

8.葛之葉雨彦

父が亡くなり、遺品整理をする際に清掃業者を頼みました。当時24歳の私は父とのあまりにも早い死別を受け止めきれず、清掃業者さんが来ているというのにも関わらず、ずっと泣いていました。 清掃業者さんの邪魔にならないように縁側に座り、涙が枯れるほど泣いていたのを覚えています。 「あの」 泣いている私に業者の方が声をかけてくれました。 背が大きくて、前髪を上げたつり目のお兄さん。 我が家の梁が低いようで姿勢が辛そうだったお兄さん。 「使ってください」 そういって綺麗に折りたたまれたハンカチを差し出してくれました。見かけによらず優しい声をされていてとても素敵でした。 もう出ないと思っていた涙が再び零れ落ちてきて、申し訳ないと思いながらも断りきれずにハンカチを借りました。お香の匂いがしてとても落ち着きました。 業者のお兄さんも25歳のときにお父様を亡くされたそうで、私の気持ちに寄り添い沢山お話を聞いてくれました。 お兄さんとお話するうちに心が浄化されるような不思議な感覚になり、晴れわたる青空のようにスッキリした事を覚えています。 「お父様は今もあなたを見守ってますよ」 最後にそう言ってお兄さんはお仕事に戻られました。 父を失った喪失感や、父に親孝行出来なかった罪悪感でいっぱいでしたが、その言葉で不思議と心が軽くなりました。父が見守ってくれている。それが例え嘘でも、その時の私には十分でした。 借りたハンカチは洗って返そうとしたのですが、「差し上げます」と言われたので、この時に頂いた『アヤカシ清掃社割引券』と一緒に大事にとってあります。 あれから3年。 まさかあの時のお兄さんをテレビで見る日がくるとは思ってもいなかったのでとても驚きました。 清掃業者としてもとても素敵でしたが、アイドルになったお兄さんはより素敵に見えました。 あの日来てくれた清掃業者さんがお兄さんじゃなかったら、私は立ち直れていなかったかもしれない。 お兄さんの言葉で前を向くことが出来たので、今度お礼も兼ねてファンレターを書こうと思います。 いつか、代わりのハンカチもプレゼントしたいです。

 

9.天道輝

法学部ゼミの後輩です!いつもレジュメ作りが速くて、ディベートで敵無しだったのが懐かしいです笑。たまに煙草を吸ってたので、意外だと伝えたら「大人っぽく見えるか?」と困り眉で返されてドキドキしました。素敵な弁護士になると思ってたし、同じくゼミの先輩である彼女さんと結婚するものだと思ってました。でも、アイドルとしてキラキラしてる先輩も嫌いじゃないです。また会えたら、あの頃と同じように、呼び捨てで話してくださいね。

 

10.舞田類

大学2年の頃、まあまあ病んでた時期があって、寝れなかったり物忘れが激しかったりでまともに授業出れてなかったんですけど。深夜に大学垢で「どっか遠く行きたい」って呟いたら、類からDMが来たんですよ。同じ国際交流サークルだけど、サシじゃほぼ話したことなかったのに、ですよ。あとアイツ馬鹿みたいな数の兼サーしてましたし。しかもそれが、 「Hey, Sota(偽名です)! 海行かない?」 の、たった一行。深夜2時半過ぎに。正直、コイツ確信犯だろって思いましたね。即レスで「行く」って返してましたよ。 で、なんかとんとん拍子に日程とか決まって、2人で駅から海までの30分くらい歩いて。夏前の、ほぼ人がいないビーチに行ったんです。割と梅雨近かったのに、笑うくらい晴れてましたね。ズボンまくって膝まで海に入ったり、水蹴ったりして。いやなんだよこれ青春じゃん、ってなってましたね。めっちゃ冷たかったな。 で、寒くなってきたから上がったら、類にドクペ差し出されたんですよ。ドクターペッパー。俺割と好きなんで、礼言って貰おうとしたらひょいって避けられて。意味わからんくて固まってたら、今度はメントスをちゃんと渡されたんすよ。で、開けた缶指差してニヤって笑うもんだから。もう、なんなんだよお前って思いながら3粒一気にぶっ込みました。噴き出したドクペの勢いが阿呆みたく強いもんだから、類びっくりして放り投げちゃって。2人でめっちゃ逃げ回って爆笑してましたよ。 結局大学には5年間いたけど、あんなに輝いてる瞬間なかったっすね。アイドル向いてますよ、アイツ。

 

11.黒野玄武

私の「お兄ちゃん」は優しくてかっこいいんです。 お兄ちゃん、って呼んでるけど血の繋がりはなくて。でも、そんなの関係ないくらい、お兄ちゃんは優しいの。 お兄ちゃんは、みんなのお兄ちゃんだから。いつも読み聞かせをせがまれて、その度に今日は何を読もうか、って私に聞いてくるんです。読み聞かせされる子たちに聞けばいいのにね。不思議に思って、1度聞いてみたことがあります。そしたらお兄ちゃん、なんて答えたと思う? 「チビどもに聞いても収拾つかないからな…それに、大きくなったヤツらは別のことしに行くのによ、お前はいつでもいちばん楽しそうに聞いてくれるから」 だって。…そりゃそうだよ。大好きなお兄ちゃんの読み聞かせだもん。 ねぇ、お兄ちゃん。いつまで経っても私の、私たちの「お兄ちゃん」でいてね。

 

12.ピエール

一介の町娘です。よくお城を抜け出して街へ遊びに来る彼と秘密のお友達として仲良くしていました。もちろん当時は彼が王子様であったことどころかどこの誰なのかも知らず、お召し物がきれいでしたのでどこぞの貴族のお坊ちゃまが暇つぶしに町中に出てきているものと思っておりました。 身分の差を感じながらも笑顔の素敵な男の子だな、と恋心を抱いていました。 我が国の王が亡くなられてから王位継承権争いが激しく行われているという噂を耳に主るようになるころには、彼に出会うこともなくなってしまい、淡い気持ちはそのまましまっておこうと思っていました。 その後とある貴族の方の邸宅へ下働きとして出ていた私は、異国から留学してきた王子がアイドルに!というニュースを耳にし、こっそりご主人さま方がいないリビングのテレビを遠目に覗いてみたのですが、なんとびっくり、そこに今生会うことを諦めていた彼が映っていました。 私が初めての恋をした、笑顔がキラキラした純粋な彼が遠い国でアイドルとして人々に笑顔を届けようとしている。なんと素敵なことかと思いました。 その笑顔が今後二度と私に向けられないことが少し寂しくはありますが、たくさんの人を笑顔にしたいという彼の願いにはぴったりな活動と思います。 遠い異国から、毎日応援の祈りを捧げております。 貧しい地域で暮らす私に笑顔を教えてくれたピエール王子がいてくれて、あのときあなたに出会えたからこそ、いまの私があります。本当に感謝しております。もう二度とお会いすることができないとしても、一人でも多くの人が、彼の笑顔に救われてくれるのなら本望です。 遠い異国の貧しい村はずれから、いつまでもいつまでも、お慕い申し上げております。

 

13.秋山隼人

 若里くんが軽音部に入ったんだってね。ほんとに格好良い、2個上っていうのもなんか惹かれる。だろ?ハルナは格好良いんだ。 そんな話を、隣の席の秋山とよくしていました。若里くんに話しかけられちゃった、名前覚えててくれた、そんな小さな報告をする度に自分のことのようにへへっと笑う彼の笑顔が印象的でした。 彼らがアイドルになり、学校も休みがちになり会う機会も減っていたある秋の日、文化祭。凱旋ライブを行った”High×Jokerのギタリスト 秋山隼人”を見て、秋山、かっこいいなと思いました。ずっと気づかない振りをしていただけだったんだな。きっと私は、秋山のことが好きだったんだと思います。 

 

14.円城寺道流

円城寺くんと同じ高校でした。本当に柔道に打ち込む姿がかっこよくて凄く好きでした。 朝練後の3時間目くらいに寝落ちてるところをみて起こしたりとかして、笑いあったりしてたのに告白したらまだ柔道に打ち込みたいって振られました。でも誠実に真剣に断ってくれたしその後の関係も変わらなかったので、円城寺くんは優しくてかっこいい素敵な思い出になった恋でした。

 

15.古論クリス

古論先生が大学に勤務されていた時、先生の授業を専攻していた者です。 小さい頃から海の生き物が好きでした。 猛勉強して入った大学の海洋学部で自分と同じ熱意を持った人達と勉強できると期待していたのですが、実際はそんな事はないと気付き始めた頃に出会ったのが古論先生。 講義内容は決して分かりやすいとは言えませんでしたが、海について話す古論先生が好きでした。 同じ講義を受けていた友達は意味がさっぱり分からないと言っていたけれど、自分は古論先生が見た海の美しい光景を知る事ができてとても嬉しかったんです。 古論先生が大学を辞められて、海の魅力を伝えるためにアイドルになった時はとても先生らしいなって思いました。 でも、時々こう思ってしまうんです。 先生の話を理解できたのは、私だけだったのにって。

 

16.硲道夫

元生徒です。 硲先生はいかにも真面目で厳しい先生かと思いきや、毎回授業で生徒の気を引こうといろいろなことをしていました。 最初は何をしてるのかと思いましたが、それが私達生徒を楽しませようとしているのだと気づいたら、苦手だった数学の授業も楽しく思えてきました。 よく見ると顔もかっこいいし、生徒思いで優しいし、好きになるには十分でした。 友達は変な先生だと言っていたけれど、みんな先生の魅力に気づいてないのだ、とその想いを密かに抱いていました。 そんなある日、先生が学校を辞めて、アイドルになったと聞いた時はショックで一晩中泣きました。 周りの友人もテレビで見る硲先生をかっこいい、好きだと毎日騒いでいる。 先生は、ずっとかっこよかったのに。 ずっと、私の方が先生を好きだったのに。

 

17.木村龍

めちゃくちゃモテてましたよ 学年の女子7割くらい木村のこと狙ってたと思います。なのにあいつそれに気づいて無いんですよ。バレンタインとかあげても義理だと思ってるのムカついたなーそんな所も好きだったんですけどね

 

18.山下次郎

化学の担当が山下先生だった高校生です。 山下先生が先生だった頃に「山下だけは絶対ない笑」とか言ってた友達がアイドルの先生に沸いてるの正直ムカつくから友達と居る時にS.E.Mの話題が出ないように毎日祈って学校行ってます

 

19.天峰秀

 天峰、いっつもカースト高めなクラスメイト達に囲まれてて俺みたいなオタクは近づけた事がないんだけど、文化祭の準備で同じ班になった時に下の名前で呼ばれて(俺のこと把握されてるんだ…)ってめちゃくちゃドキドキしたよね。あの時不自然になってでも天峰の新譜の感想伝えればよかった…  

 

20.握野英雄

警察学校で一緒に訓練を受けていました。 酒タバコ禁止なせいでお菓子とアイスしかない購買で一生懸命お気に入りのお菓子を選んでるギャップがなんか可愛かったです。 同じ署に配属になった同期から辞めたと聞いた時は驚きましたが、嬉しそうにスイーツの食レポをしてる姿を見てアイドル似合ってんじゃん。と思いました。今日も当直頑張ります。

 

21.渡辺みのり

一目惚れです。未だに好きです。

続きを読む

#私だけのアイドルだったのにな選手権予選 第15ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第15ブロックです。残り僅かとなりました……!

今回の投票期間は2月1日0:10~2月2日23:50です。ご注意ください!投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

続きを読む

#私だけのアイドルだったのにな選手権予選第14ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第14ブロックです。今回の投票期間は1月30日0:10~1月31日23:50です。ご注意ください!投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

続きを読む

#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第13ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第13ブロックです。今回の投票期間は1月28日0:10~1月29日23:50です。ご注意ください!投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

続きを読む

#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第12ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第12ブロックです。今回の投票期間は1月26日0:00~1月27日23:50です。ご注意ください!投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

続きを読む