私だけのアイドルだったのにな選手権

私だけのアイドルだったのにな…※アイドルマスターSideMの二次創作企画です。公式様とは一切関係ございません。

#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第7ブロック

皆様お疲れ様です。つのです!

いよいよ#私だけのアイドルだったのにな選手権 予選第7ブロックです。今回の投票期間は1月16日0:00~1月17日23:50です。ご注意ください!

投票フォームはページの一番最後にございます。好きなエピソード3つに投票してください。

1.卯月巻緒

実は以前、卯月巻緒くんと同級生でした。 と言っても卯月くんは学年の途中で転入してきて、「うち、転勤族だから」という枕詞に違わず、また半年ちょっとで転校していったんですが。 はじめ、転入生として挨拶してくれた時は、顔は良い方だけど、どっちかというと可愛い系だな〜と思っていました。(筆箱にもケーキのチャームがついてましたし。) でも実際に話してみると結構男前というか、なんでもそつなくフォローできるやり手、みたいな感じで、でも嫌味じゃないっていう、ちょっと怖いくらい出来すぎた人間でした。 確かに卯月くんは最後まで顔は可愛い系でしたが、その奥に秘められた才覚は一筋縄じゃないな、と勝手ながら思っていました。 でも、そんなことみんな分かってたんだよな〜と近頃の卯月くんの目覚ましい活躍を見ていると感じます。 同級生だった時でさえせいぜい数えられるほどしか会話していないのに、なんだか卯月くんのことを分かってる気になってたんですよね。 今にしてみれば不思議です。 本当はアイドルって趣味じゃないし、ましてや昔の同級生を追ってる、なんてちょっと怖いかもしれないですけど、今年も卯月くんの誕生日にケーキを食べようと思ってます。 本人不在の誕生日会ってやつですね。 今となっては、生まれた時から暮らしている私より地元のケーキ屋に詳しくなった卯月くんが、当時教えてくれたオススメのケーキたちだけが、卯月くんと同級生だった唯一の証明です。

2.猫柳キリオ

とある商店街でバイトをしていた時の話です。お店の前でクリスマスリースの飾りつけをしている時、大きな松ぼっくりが飛んでいってしまったのを通りかかった猫柳くんが拾ってくれました。松ぼっくりを見つめる目が輝いていて、それがとても愛らしくて印象に残っています。今では我が家の猫にキリオと名付け、我が家のアイドルとして日々癒しをもらっています。

3.木村龍

ドラッグストアのアルバイトです。近くに消防署があります。きっとそこに勤務していたんでしょうね。木村龍くんが、時々お買い物に来てくれました。ある時は飲み物、ある時はおにぎり。絆創膏を買って行くことも多かったです。 レジに来た時は、いつも「よろしくお願いします!」袋に入れた品物を渡すと「ありがとう!」って言ってくれました。従業員の間でもあの消防士さん可愛い、爽やか、感じいいってみんなに言われていました。あれ、すでに私だけのアイドルじゃなかった(笑)。 ある日、「靴紐が切れちゃって困ってるんだけど、靴紐なんて売ってないですよね……」って聞かれたんです。靴紐は取り扱ってなかったのですが、手芸用の紐があったのでご案内しました。それでも彼は嬉しそうに笑ってくれて、「助かりました!ありがとう!」とそれを買っていったんです。欲しい商品が無いと不機嫌そうに怒るお客様も少なくないので、木村くんには本当に癒されました。 その後店長に無理を言って靴紐を置いてもらうようにしたのですが、ちょうどその頃に消防士を辞められてしまったのでしょうね……。まだ、木村くんに買われていない靴紐が、お店にあるままです。私も靴紐も、またお買い物に来てくれないかなって、ずっと待ってます。

4.牙崎漣

昔ちょっとだけたい焼き屋やってました。 じいちゃんの店なんだけど、脚やっちゃって入院してて、その代打で数ヶ月くらい。 じいちゃんからちょろっと教わった程度なのに今日から1人で店やれなんて無茶ぶりにも程がある。一応焼けますよ〜…ってレベルなのに。ただ不幸中の幸いか、ぜんっぜんお客さん来ないのよ。まあ寂れた公園の端っこにあったからさ。デカデカした赤い屋台なんて普通ビビって近づかないわな。 そんな感じでめちゃくちゃ暇だったので、いつしか公園に来る人を観察するのが楽しみになってた。 土木のお兄さん。いつも12時過ぎに公園に来て、ベンチに座って昼飯食ってた。でっかい弁当をものの5分で空にしてて、見ていて気持ちいい。たまにたい焼きをデザート代わりに買ってくれた。 たまに散歩に来るじいちゃんとばあちゃん2人組。来た時はいつも2匹買ってってくれた。家でお茶いれて一緒に食うんだって。ああいう風に歳とりてーよなあっていつも思ってた。 あともう1人。いつの間に来ていつの間にか居なくなってる、そんな子。 銀髪だから結構目立つ。顔も日本人離れしてて、綺麗だったんだ。 いつも空手…?拳法かなんかの型を練習してた。あとはベンチで寝てるか、猫と遊んでるか。学校とかは行ってなかったぽい。 結構肌寒くなってきたある日、あのこはベンチに座って猫抱えたまま動かなかった。何があったのかはわかんないけど、服がちょっと汚れてた。心配になって話しかけたけど、ちらっとこっちを見ただけで返事はなかった。 お腹すいてんのかもなあって思って、焼きたてのたい焼きを紙に包んで渡した。「熱いから気をつけてね」って言ったら、俺をじーっと見てんの。やっぱり綺麗な子だなと思った。 そういえば海外って、無理やり食べ物を渡して後から請求するって手口があるらしいな。ふと思い出したのでついでに、「タダでどうぞ」と付け足して言った。 俺からたい焼きを受け取ると、あのこはぺろっと一匹平らげた。そんで紙を丸めて、完璧なコントロールでゴミ箱に投げ入れたあと、俺にこう言ったんだ。 「なかなかウマかったぜ!この食いモンの名前を教えやがれ!」 それからすぐ、じいちゃんは復活して俺はたい焼き屋をやめた。あのこがどうしてるか気になってじいちゃんに聞いたけど「そんな子は来てないなあ」って。俺も何回か見に行ったけど、やっぱりあのこに会うことは無かった。 それが数年前の話。じいちゃんはもう引退して、のんびり暮らしてる。俺ももう人生でたい焼きを作ることは二度と無い。 そんでさあ、今日テレビ見てたらさ、出てんのよな、あのこが。 とらきば…どう?ちょっと後でググるから待って欲しい。アイドルなんだって。 老舗のたい焼き屋で食べ尽くす!みたいな名前のVTRでさ。すんげー食ってんの、めっちゃ美味そうに。もっと食べさせてあげればよかったなー。あれからたい焼きのこと好きになってくれたのかな。…俺のおかげだったりするのかな。 そこでなんか辛くなって、チャンネルを変えようとしたんだ。そしたらインタビュアーが聞くのよ、「今まで食べたたい焼きでいちばん美味しかったのはなんですか?」って。 「公園にあったシュミの良い屋台のがいちばんウマかったな!おいオマエ!どっかで聞いてたらオレ様に連絡しやがれ!」 そこでテレビを切った。 そんなこと出来るわけないじゃん。 だって君はもう​───────​

5.秋月涼

幼稚園から小学生までですが、一応、幼馴染になると思います。 私の家は、両親共働きで忙しく、小さい頃はよく、近所の秋月さんのお家で遊ばせてもらっていました。 私と同い年で幼稚園も一緒の涼くんは、色が白くて目が大きくて、フリルのついた白いエプロンが誰よりも似合う、とっても可愛い子でした。従弟の顔立ちが似たお姉さんに、よく女の子の格好をさせられていたので、小学校に上がり黒いランドセルを背負った姿を見るまで、本当に女の子だと思っていました。本人は女の子の服を着せられるのを嫌がっていましたが、彼は背がクラスで1番高い私よりずっと、ピンクのワンピースやお花の髪飾りが似合っていて、羨ましかったです。あまりに可愛いので、隣に並ぶのが嫌な時期もありました。 涼くんのお家では、2人でよくお菓子作りをしました。不器用なので私が作るクッキーの形は歪だし、ホットケーキは黒こげになりました。でも、涼くんとお菓子を作るのは楽しくて好きでした。涼くんは自分が作った、売り物のような出来映えのお菓子と、私の不格好なお菓子を交換してくれて、「おいしい」と笑ってくれました。笑った顔は花が綻ぶように可憐で、思わず見惚れてしまいました。 小学校6年生の冬に親が離婚して、私は母の地元で暮らすことになりました。最後の日、彼は新幹線の駅のホームまで見送りに来てくれて、私に手作りのクッキーをくれました。 夜に書いた私の手紙は、とうとう渡せませんでした。 新幹線で食べたクッキーは、涙で味が分かりませんでした。 あの日渡せなかった手紙は、今も捨てられずにいます。

6.北村想

高校生の時、同じ委員会だったので2人で話す機会が多くありました。私が当時彼氏に振られて愚痴りながら荒れていた時期に「僕は~さんのそういうところ別に嫌いじゃないけどねー。」と言われた瞬間、その台詞的に私にちょっと気があるのかなって浮かれてしまった記憶があります。 そのまま好きになってしまい、卒業式の後に告白したらいつもの笑顔で軽く振られました。あの後もよく話してたし結構自信あったのにな。 あの北村が最近はアイドルしてるんだもんね。あーあ。

7.蒼井享介

もう保育園年少?年中?くらいだったかな。 一個上が蒼井兄弟で、遊んでもらったんですよね。中でもきょーすけお兄ちゃんはクラスが一緒なのもあってよく絵本とか読んでもらったりとかして懐いていたのもあって、いつの間にかゆうすけお兄ちゃんとの見分けもつくようになってました。これは覚えてないんですけどきょーすけお兄ちゃんの妹になりたがっていたようですよ。 元々サッカーで有名だったしすっかり別次元の人だけど、ふふ、自慢の思い出です。

8.都築圭

都築さんは、私が師事しているピアノの先生のお知り合いでした。中学三年生のときに、一度だけお会いしたことがあります。 私はその日の放課後、大好きなドビュッシーの楽譜を手に、いつものようにお教室を訪ねました。 すると、先生のご自宅なのに、知らない音色のリストが聴こえてきて…。 訝しむ私をよそに、情感たっぷりに奏でられる『愛の夢』第3番。息をのむほど美しく繊細な音色に、私は廊下に立ち尽くしてしまいました。 音の主が気になって、開いた扉からレッスン室を覗くと。艶のある蜂蜜色の髪、物憂げなペリドットの双眸、鍵盤上で踊るしなやかな指先…。 耳だけでなく、目も心も奪われ、焦がれるにはもう、充分すぎました。 しばらく演奏に聴き惚れていると、不意に交わる視線、途切れる調べ。 …目が、離せませんでした。すべてに魅せられてしまって。そんな中でも頭の片隅は辛うじて働いていたのか。あれ、もしかしてレッスン、振替だった…!?そう思い当たった私は、事情を話してお暇しようとしました。 …ところが。聞いてか聞かずか、彼の視線は私の手元、灰青の楽譜に。 「…小組曲」 落ち着いた、品のある声。 「僕も、好きなんだ」 ゆっくりとした口調。 「…君は、プリモ?セコンド?」 口ずさむような声音に、くらり。 鼓膜に届くその心地の良い音が、私に連弾のパートを問うていると気づくまで数秒。 慌てて答えると、彼は座っていた椅子の右半分を譲るように身体をずらしました。来ないの?ほら早く、と言いたげな眼差し。 一緒に演奏…?私と…?よぎる不安と、 彼はこの曲を、どんなふうに奏でるんだろう…! そんな期待がせめぎあった末、私は隣に腰を下ろし、譜面台に楽譜を。第1曲『小舟にて』のページを開くと、彼の手は既に、曲はじめの位置。 緊張でどうにかなりそうな私は、深く、深く、ひと息。…そして、吸い込まれそうな瞳と、アインザッツ。 始まりは、波のさざめき。優雅に、Andantinoで紡がれていく音の粒たち。気付けばそこはもう、きらきらと光の降り注ぐ波間を、小舟が揺蕩う幻想的な世界。 二人分の衣擦れ、隣りあう肩の温度、時折微かに触れる指先…。奏でられる旋律だけでなく、それらすべてから生まれる心地の良い音楽。 …あぁ、なんて幸せなんだろう。 部屋の主が戻るまで、私たちはハーモニーを奏で続けました。 …それはそれは、夢みたいなひとときでした。 二人で紡いだ音色、一度きりのあの時間は、いつまでもきらめく私の宝物です。

9.榊夏来

※ナマモノ腐注意 高校で同じクラスの榊くん。彼はその容姿や雰囲気、いつも一緒にいる冬美くんとの独特な関係性で静かだけど目を引く存在でした。私も彼のことが気になり…いえ、もうここだけの話として告白しますが、腐女子である私は高校入学当初から榊くんと冬美くんのナマモノBLを創作していました。 彼らを眺めては衝動のままにイラストを描き、同じ趣味の友人内でのみ妄想を共有してひっそり楽しんでいたんです。 そんなある日、私は廊下で榊くんとぶつかった拍子にファイルをぶちまけ、プリントの裏に落書きした二人のイラストを見られてしまいました。健全絵なのは救いでしたが、話したこともない同じクラスのオタクが勝手に自分と友人の妄想絵を描いてる。どう考えてもキモい。絶対ドン引きされてる。パニック状態で言葉も出ない私に榊くんは「…これ…俺と…ジュン? ふふ、絵…スゴく上手だね」とまるで地上に舞い降りた天使のように穏やかで美しい微笑みを浮かべながら落ちたプリントを拾い上げ手渡してくれました。 榊くんがあの時、私の絵を褒めてくれたことは一生忘れません。多分、彼は本物の天使なんだと思います。 次のライブではハイジョーカーのイラストを添えた楽屋花を贈る予定です。

10.神谷幸広

イギリスに交換留学していた時、よく通ってた紅茶店のマスターに日本人の子が入ったからといって紹介されたのがユキヒロさんでした。近所の日本食を売っている店に行くために3回くらい2人で出かけたことあるんですけど、毎回気付いたら迷子になってるし、連絡先交換してなかったから探しに行くこともできないし、でもなんだかんだで憎めなくて印象に残ってます笑 結局私が試験で忙しくしている間にユキヒロさんは帰っちゃったみたいなんですけど、マスターづてに日本でカフェを開いたことを知って、帰国したら遊びに行こうと思っていたのにいざ日本に来てお店調べてみたらアイドルになってました。あと絶対年上だと思っていたのに、実は同い年だったこともその時知りました。

11.清澄九郎

高校の時清澄くんと3年間同じクラスでした。 綺麗な顔と穏やかそうな性格にあまり話は出来なかったものの片思いをしていました。 彼が近くの席になった時は授業中綺麗な髪色だな〜と眺めていたました。 3年のバレンタインデーには数え切れないほどのチョコレートを抱えて「お返しはどうしましょう」と困り顔だったものの嬉しそうだったのを覚えています。その時、教室にはたまたま残っていた私と女の子の呼び出しから戻ってきた清澄くんだけで、イケメンは大変だねと茶化すことしか出来ませんでした。

12.山下次郎

私が美大受験をしていた頃の話です。私の日課として毎日放課後に鉛筆を整えてから画塾に向かうというものがありました。ある日の放課後いつもと同じようにカッターナイフを滑らせていると、廊下の方から視線を感じたのです。振り向くとそこには山下先生が教室のドアにもたれかかってこちらをじっと見つめていました。当時山下先生は男子生徒からの人気が強く、全く接点はありませんでした。 「どうしたんですか?」と声をかけると 「毎日頑張ってるな」と言い軽く微笑んでどこかへ行ってしまいました。 今もその少しのたった数秒、どうしてももう一度あの瞬間に立ち会いたい。些細な出来事がその日からずっと忘れられません。これが恋だと言われると納得は出来ないけれど、そういう感情に近しいものだと思います。アイドルになったテレビ越しに見る山下先生は微笑んでファンへの気持ちを伝えているのに、あの日のあの時間とは何かが違うんです。卒業するまでに先生は退職され感謝の言葉も言えずそのままそれっきりです。 誰にも見られていない私の『努力』を山下先生だけは見ていてくれた。先生にとってはただの教師と生徒という関係で、純粋な応援だったのでしょう。私だけのアイドル、私だけが知っていた山下先生。そんな不純な想いで今も先生の活躍を見ています。 先生、私第一志望受かったよ。 ありがとう、ごめんね先生。

13.姫野かのん

 昔近所に住んでました。でも多分かのんくんは覚えてないと思います。かのんくんが2歳になるかならないかぐらいでうちが引っ越したので。なにかの時にお家に遊びに行って、生まれたんだよ〜!って抱っこさせてもらいました!もう本当に、本当に、ほんっとうにかわいくて!!!自分が守らなきゃ!なんて思っちゃったり……。自分はちょっと、うちに居ずらくて外で遊んでることが多かったから、かのんくん家の人がお散歩してるときに会うこともありました。「大きくなったら一緒に遊んでくれる?」って言われた時は嬉しかったな〜!!大きくなる前にうちが引っ越しちゃったけどね。あーあ遊びたかったなぁ……。

14.眉見鋭心

 誰も責めていないのに。眉見本人は心を痛めているようだった。あの綺麗な長い髪をいきなり切ってきたときのことは忘れられない。好きだったと自覚したのはこのときだ。 俺は図書委員をしていて、そのおかげで眉見と言葉を交わすことができた。どんな本を読むのか知ることができる特権。なんて最高なんだ。 カウンターに差し出されたのは有名な戯曲集と映画部が出している冊子。 やっぱり演技の道を志しているのだろうか。もっと遠い存在になってしまうのか。 貸出期限の定型の台詞を機械的に告げた。せっかくだし何か、会話に繋げてもとまごついていると涼やかな声が響いた。 「少し、聞いてもいいか」 俺に向けて掛けられた言葉に心臓が跳ねる。 「あ、ええ。わかることであれば答えるけど」 「この部誌は過去のものは置いてないのか?」 答えられる問いであることに安堵し、一呼吸した。 「ああ、それはね。ここには最新号だけなんだ。たぶん前のは部活の方で管理してるよ。」 「そうなのか。ありがとう」 「どういたしまして。結構聞かれるんだけど、それ面白い?ちょっと気になるな」 「ああ、興味があるなら読んでみるといい」 そのときの表情は俺だけのものだ。目を細めてゆるく口角を上げたやさしい顔。そんな顔をするんだ、こんなたわいのない会話だけで。 眉見の役に立てたどころか、話までしてしまった。また話せるといいな、そのためには一生このカウンターに座り続けられる。やたら固い椅子だが、何も問題はない。 「俳優じゃなくてアイドルかあ……」 まもなくして、眉見がデビューすることがわかった。ついにかという感じではあった。 校内は浮き足立ち、全校朝礼は湧いた。またしても遠くなってしまった。 けど相変わらず図書室に足を運んでくれていたし、騒がしくないときや時間がある時は席について本を読んでいる姿があった。 「何か、用でも?」 不自然なく視界に眉見が入るように、係の仕事をこなしていたつもりがバレていた。 「ごめん。君の読んでる本が気になって」 声を掛けてくれたらいいのにと、やや困った顔をする。俺が興味があるのは本を読んでる眉見自身なのだが。 「前にもあったな。まだ途中だが、この本は面白いぞ」 「ありがとう。探して読んでみるよ」 この前のこと覚えていてくれた。嬉しい。けど今一番に伝えたいのはそうじゃなくて。 「アイドル、応援してる」 「ありがとう」 まさかお前に言われるとはな、なんて意外そうな顔もいい。じゃあまた、と振り返って部屋を出る背をずっと見ていた。 応援してる。アイドルだけじゃなくて、あなたの全てを。

15.神楽麗

 小学五年のとき、友達のお母さんが「チケットあるからうちの子と一緒にどう?」と誘ってくれて神楽麗さんのバイオリンリサイタルに行くことになりました。わたし、クラシックのコンサートって初めてで、どんな服を着ればいいのかとかマナーとか全然知らなくて、その時は一生懸命お洒落したつもりだったんですけど、いま思えばメゾピアノのワンピースに学校行くときのスニーカーで何だか場違いでした。だけど一番恥ずかしかったのが、楽章と楽章の間は拍手しないってのを知らなくて。神楽さんの演奏が素敵で思いっきり拍手したら、わたししかしてなかったんです。ほんと恥ずかしかった。その後のことはほとんど覚えてないです。視線が痛いってこういうことなんだって知りました。だけどアンコールも終わって神楽さんが舞台から袖に向かう途中、多分ですけど目が合ったと思います。ほんの少しだけ、微笑んでくれたような気がしました。 その日、自分のおこづかいで初めてCDを買いました。アイドルになってからもずっと気になってて、お金ないからライブは行けないけど配信とかあるとつい見てしまいます。 ただ、先週出た雑誌を立ち読みしたら、ぼかしてはいたけど演奏活動してた頃のことはあまりいい思い出じゃないみたいに言ってたので、いまはちょっと複雑な気持ちです。

16.華村翔真

皇子と呼ばれた彼、窓際の席で頬杖ついてつまんない顔してる、磨かれた艶やかな爪が教科書を無意味になぞってる、時折走るシャープペンシルが私と同じキャンパスのノートに誰よりも綺麗な字を紡ぎ出す、元から色素の薄い前髪の間、長い睫毛の伏せられた様が鬱屈さを増している、隣の席の華村君と一度だけ。 たった一度だけ斜めに目が合い、「アンタも何か言いたいの?」、少年の声で放たれた矢に返す言葉を少女時代の私は有しておらず、目を逸らして教科書など読むふりをしてしまいました。なんて返したらよかったかな、なんて言えば正面から顔を見て話すきっかけになったのかな、その日は寝るまで考えて、翌日にはまた目も合わない日常へ戻ったのでした。 その後数ヶ月すると不在が増えて冷えた隣の席。『皇子は休み時間のたびに古典の先生の元へ質問しに行ってる』と噂は聞いたけど、いつの間にか低くなった声、歯を見せて笑うようになった口元、華村君は見る間に知らない人になっていました。そう実感する頃には学年が上がり、クラスが分かれ、彼を見かけることもほとんどなくなってしまいました。

17.握野英雄

警察学校時代の同級生でした。 当時、学年の中で優秀だった握野くんとは違い、私は落ちこぼれで学校を辞めるか悩んでいました。 そんな時に声をかけてくれたのが、出会いです。 普段から近寄りがたいオーラを持っていた彼ですが、とても優しく「どうしたんだ?」と声をかけてくれました。 悩みを打ち明けられる人がおらず、苦しんでいた私に気づいたのだそうです。 その優しさと真っ直ぐさに、泣いてしまった私の拙い話を静かに聞いてくれました。 話終えてこんな話をしてしまった事を謝ると、彼は「もっと話しやすい奴がいるだろうに、俺に話してくれてありがとな。」と笑って返してくれました。 その笑顔に恋をしたのです。 その後も「俺はどんな道を選んでも応援する。自分が決めた事なら、間違いなんてないさ。」と言ってくれました。 結局私は、警察学校を辞めて別の道に進みましたが、握野くんの言葉を大切にしています。 今はアイドルとして元気をくれて、応援してくれてありがとう。 大好きでした。

18.兜大吾

大吾くんと小学校が一緒でした。教室のすみっこで本を読んでた私に声をかけてくれて、鬼ごっことかドロケイとか誘ってくれたなぁ。鬼になった時に女の子相手だとちょうど楽しい速さで走ってくれて、そんな優しい所がいいなって思ってて。ずっと下を向いていた私に手を差し伸べてくれた、それこそ光みたいな子で、そんな彼の事が好きになっていました。私は中高一貫の高校行っちゃったから、そんな想いを伝えられないまま2年が経っちゃって…。今大吾くんは何やってるんだろう。部活は?運動神経抜群だもんね。きっとエースなんだろうな。 ねぇ大吾くん、今、楽しいですか。

19.水嶋咲

中学時代の同級生です。 私の方から告白して、ちょっと困ってたけどOKをくれました。 私、実は自分と同じ女の子が好きだった。 でもそれが何だかおかしな事のように思えて、男子の中で一番いいなって思ってた水嶋くんを彼氏にすれば男の子が好きだって思えるようになるかもって。 今考えると、きっと私水嶋くんがすごく可愛い子だって心のどこかで思ってたんだと思います。 別々の高校に進学したせいで自然消滅しちゃったけど、私カフェパレにいる水嶋くんの事、すっごく好きだよ。 あの頃は長くしてた髪の毛、今は結構短くしちゃったんだ。でも水嶋くんのツインテール見てるとまた伸ばしたくなる。 次会う時はありのままの自分で、なんて。 ごめんね。 ありがとう。

20.大河タケル

 同い年の高校生です。以前、うちで飼ってる柴犬の散歩をしていた時にジョギング中の彼と偶然出会いました。最初はあまり見かけない人だなぁとしか思っていませんでしたが、それから週に何度かすれ違うようになって、彼が落としたタオルを私が拾ったことをきっかけに初めて会話をしました。 話の流れで彼がうちの子を撫でてくれることになったのですが、優しく頭や体に触れている時、いつもの凛々しい顔つきが少しだけ緩んで、「可愛いな」って言ったんです。 その時の声と表情が、すごく素敵で… 私に向かって言ったわけじゃないのに、どうしていいかわからなくなって、黙ってリードを握りしめることしかできませんでした。 その日から、彼と偶然会ってはちょっとおしゃべりして別れるという日々が続きました。 今日の天気、犬派か猫派か、ボクシングの話、美味しいラーメン屋さんの話。会う回数が増えても話す内容は日常の何気ないことばかりでした。それでも大河くんと話してちょっとだけでも笑い合えるのが嬉しくて、そんな時間が心地よくて、幸せでした。私にとって大切な思い出です。 私は今、親の都合で引っ越しをして地方に住んでいます。引っ越す前日にお別れの挨拶をしたかったけど、その日は別のコースを走っていたのか彼と会うことはありませんでした。 いつかまたどこかで会えたらいいなと思っていたので、偶然観ていた歌番組に大河くんが出ていたときは本当にびっくりしました。引っ越してから1年ほど経った頃のことでした。 私もライブやイベントに行けばまた彼に会える。 でも、散歩中に顔を合わせて少しだけおしゃべりをする、あの時の大河くんにはもう会えないんだなあと思うと、少しだけ胸がぎゅっとなります。

21.花園百々人

小学生の頃、僕は生き物の写真を撮るのが好きでした。生き物フォトコンクールにも応募して、最優秀賞を取ったこともあったり。 中学に上がった頃、伸び悩んで、何を撮っても面白くない時期があって、その年もコンクールに出したんだけど、佳作止まりでした。今にして思えば佳作でももらえただけよかったんですけどね。でもその時は、もうこのまま辞めてしまおうかと思うくらい悲しかった。 でも、その年銅賞を取った子の中に、初めて見る子がいたんです。花園百々人。一度聞いたら忘れられない名前だと思いました。 彼、まだカメラを始めて半年だって聞きました。すごくいい写真でしたよ、彼の。まだ半年だなんて、信じられないくらい。悔しかった。どうして最優秀賞も取ったこともある僕が、そんな初心者に負けなきゃいけないんだって。 それまでが嘘みたいに、毎日写真を撮りました。他のコンテストの入賞作品やプロの写真の研究をしたりして、とにかく、次こそは花園には負けたくない、その一心でした。 次の年のコンクールは、僕は銀賞でした。花園は……どこにもいなかった。彼、その年はスピーチコンテストと彫刻コンテストに出て入選してたんですって。 バカみたいだった。あれほど彼に勝ちたくて、彼ばかり見て、その一心だったのに。その時気づきました。僕はもはや写真を見てたんじゃなくて、花園しか見てなかったんだ。それなのに、彼は僕にも、写真にも、興味なんてなかった。 もう一気に冷めちゃって、写真も彼とも、それっきりです。 最近テレビで花園を見て、少し懐かしくなっちゃいました。今だから言いますけどね、あれ、僕の初恋だったんですよ。たぶん。

22.硲道夫

結婚を前提にお付き合いをしていて、お互いの家族にも紹介をしていたが、私が道夫くんについていけるほど強くはなく、破局しました。 もともと道夫くんとは大学で知り合って、お互い教師を目指すもの同士、学生を導く目的をもって話をできて、大変有意義な時間を過ごせていたと思います。 けれど、私は卒業後の道夫くんの様子を見て、私はついていけないと悟りました。 授業態度の悪い生徒に合わせた実りがあるとは思えない授業の様子を聞いて、耳を塞ぎたくなってしまったのです。 それでも、彼は諦めませんでした。 皆に伝わる授業ができるのはアイドルだと。 彼がアイドルになる前に別れてしまった私にはもう何かを言う権利は無いかもしれません。 ですが、彼は本当に素晴らしい〝教師〟であると、もう分かっているとしても皆さんに伝えたくなってお便りを送りました。

23.御手洗翔太

「あんたの学校、御手洗翔太いるでしょ?!」 うん 「えーいいないいな、小学校の時と全然雰囲気違うんだもん!」 学校では昔とそんなに変わんないよ 「え、そうなの?まーそれでもいいじゃん!だって今やアイドルだよ、Jupiterだよ?!ねーサインもらってきてくんない?」 昔から御手洗くんはかっこよかったよ。 みんなが気づくずっと前から。 御手洗くんがJupiterになる前から、アイドルになる前から。 私はずっと知ってたよ。 国民的弟なんて呼ばれる前から、私はずっと…

投票はこちらから!

docs.google.com

投票期間は1月16日8:00~1月17日23:50です。

次回の投票は1月18日から!お楽しみに!